第4期(第31番~)のオリジナル曲
第31番「SAKAMICHI 2021」
作品名に2021と付いているのは、オリジナルは2年ぐらい前に完成していて発表せずにいたものを、アレンジを少し変えて発表した。
シチュエーションは高校生の男女で昔からの知り合い。男の子は彼女に恋心を持っているが、彼女はそれには気付かず、仲の良い友達と思っている。そんな心を歌詞にまとめている。短めにまとめた作品だが、聴く人が聴くと「オタクの歌」だなとわかる。
坂道は当然坂道グループと言われるアイドルグループのこと。ファンとアイドルの関係を高校生の男女に置き換えている。
そうとわかって聞くと、また違った作品に感じるかもしれない。
第32番「た・そ・が・れ 」
作品自体はかなり古い。20年以上前に原曲はできていた。歌詞もほぼ同じだが言い回しや時代の古さが出るワードなどを変更している。
もともとボカロが歌うような曲にしていなかったので、シャクリを入れる部分や音を切らずに繋いだりする部分が多く、ボカロがちゃんと歌えるまでにかなり時間がかかった。
曲は聞いてすぐわかるように昭和の歌謡曲。作曲しているときに、前奏とエンディングの管楽器演奏は頭にあった。作曲をしている時からアレンジが浮かんでいることは正直あまりない。曲に歌詞がついて歌えるようになって初めてアレンジを考えることも多い。
歌詞の設定は「不倫」。入社3年目の女子社員が想いを寄せるのが直の上司。彼は既婚者で、いろいろ面倒は見てくれるが決して「愛してる」とは言ってくれない。そんな中、仕事の打ち合わせで鎌倉まで。夕方には仕事が終わって、ちょっと鎌倉を散策して食事でもして帰ることに…。
おいおい、曲一つ作るのにそこまで妄想するかと言われそうだが、そこまでシチュエーションを決めないと曲が浮かんでこないことが多いのだから仕方ない。(笑)
第33番「言い訳が雨に濡れている」
雨を題材に使うことは多い。雨自体がドラマチックであり、雨が万人の人生経験に何かしら関与している。その意味でシンパシーが取りやすい題材だから。
この作品も雨と別れというベタなシチュエーションで作られている。 本来は歌い方に癖のある作品で、最初は忠実に曲を作ってみたのだが、ボカロの歌唱技術が追いつけず、スッキリした曲に変えて発表となった。
MV作成の技術も進んできて、いろいろなテクニックを駆使している。初期の頃のMVと比べるとかなりレベルが上がっていて嬉しい。
第34番「ドッチmoドッチ」
「あたしが雨を好きなワケ」「ふたりのスキマ0%」に続くラブコメソングの第3 弾になる。
設定したシチュエーションは大学生の夏のバイトでの恋物語。曲はハッピーで軽快なメロディラインということで創作開始。頭の中にはビートルズの「オブラディオブラダ」が浮かんでいたので、ピアノ伴奏曲で決定。こんなふうに曲作りが進んだ。
この手の作品は、作り出すと結構勢いで最後までメロディができることが多い。メロディだけなら2時間くらいで出来た。これに詩を付けていったのだが、ここで男歌にするか女歌にするか決められず作詞作業がストップ。 男女の掛け合いにするアイディアが生まれて、やっと作品になった。
第35番「鍵(カギ)」
場末のピアノバーで、むかし歌手を夢見て田舎から出てきた少女が夢破れて、今ではここの雇われママをやっている。たった一曲だけインディーズではあったが、出したレコードのタイトルは「鍵」。今でも酔って気分が良い時は老いたピアノマンの伴奏で歌ってくれる…。こんなシチュエーションで作られた作品。ボカロの表現力でどこまでやれるか挑戦した作品でもある。
曲はマイナーで、ジャンルは歌謡曲になると思う。頭の中では往年の加藤登紀子先生や梓みちよ先生に歌っていただきたいと思いながら作った。
自分の作品群でも異色の作品と言えるだろう。
第36番「夜明けのマーチ」
今までにも、何作か「人生にエール」みたいな作品を作ってきたが、個人的には気恥ずかしい部分があり作詞の部分でいつも悩む。この作品も最初はかなり積極的な応援歌的な歌詞だった。それを全て反対の表現に変えて「そんなに真剣に頑張らなくたっていいよ」の方向にしてみた。
曲は別にマーチではないのだが、恩田陸先生の「夜のピクニック」という小説が好きで、そこからタイトルが浮かんだ。曲はサビの部分が先にできて、それに合わせたAメロができていく作り方で完成させた。軽く口ずさめる曲になるようにシンプルなメロディを心がけている。
第37番「青空のせいかも」
友人の娘さんが中高時代に結構な武勇伝を残している子で、その話を聞くのが楽しくて、聞いているうちにこんなイメージかなと歌詞ができた。
本当の彼女の武勇伝はこの100倍くらいすごいのだが、今はビックリするくらいの美人のお嬢さんになっているので実話には触れないことにした。
原曲は高校の頃に作った一曲。そのままでは使えなかったので、かなり手を入れて完成させた。歌詞を聞かせたかったので曲は極めてシンプル。
今回ボカロには素人っぽさを出したいと思い、曲のテンポと合わせるとわずか32分の1テンポ歌い出しが早かったり、遅かったりしているところがあり、素人がカラオケで歌っているような仕上がりにしている。
第38番「ツインテールの魔女」
タイトルが先にあって曲を考えるという、今までやったことのない作業になった作品。せっかくだから、今までやったことのない事を色々入れてみようと思い、リズムを先に作り、フレーズを当て込んで、コードを合わせていき、効果音などで遊んでみた。
実は次作になる「最終電車」と同時進行で製作は進んでいて、詩が先にできたこちらの作品が先にリリースになった。作品としては短い、小品と呼んでいる部類に入る。まあ、遊びの曲なのでダラダラ長いよりも良いかと思う。
第39番「最終電車」
大まかなメロディラインはできていたのだが、曲としては短いのでいったん保留にしていた。インスピレーションは百十番氏のアップした動画で、ライブ録音に地下鉄の走行音が聞こえるという内容のもの。曲に電車のSEを組み込んでみてはと早速チャレンジ。曲は夜のイメージなので夜の電車、終電をテーマにして詩を書いた。
実際に作ってみると、音のバランスが思った以上に難しかった。当初は低い声の男声ボカロと思って作ったが、ボソボソという声になり失敗。とはいえ、曲イメージでは明るい女声では合わない。紆余曲折の結果、低めの音もしっかり発声できる女声ボカロさんにお願いした。
イントロ前にナレーションが入る。これはCoe font studioというAIが文章を読みあげる無料サイトを利用して制作。ちょっとしたアナウンサー並みの発音だと感心した。
「ツインテールの魔女」と並んで遊び心いっぱいの小品。
第40番「easy-going」
たまたまリズム音源を探していて、ジャズっぽいリズムに出会い、ジャズの知識は全くないので、似非ジャズソングでも作ってみようかと制作にかかる。
リズムに合わせて、ベースとピアノ伴奏を入れて、それっぽいメロディを付けていく。これが思った以上に苦労した。ジャズってこんな感じだっけと想像しながらの作品作りにな理、途中で何回か制作ストップした。
短い曲の発表が続いたので、今回は40作目の発表曲でもあり、少し長めの曲にしようと思っていて、コーダをつけてリフレインさせるのは当初からの予定。ところが後半のコーダのメロディは先にできていたが、完成したメインの曲とキーが合わず無理やり変調して繋ぐことになった。
歌詞は後から考えることになったが、全部英語でと思ったが、語学力の無さとボカロくんの英語発音能力の限界で、やむなく断念。コーダのみ英語にした。ジャズの歌詞の日本語訳を見ると、失礼ながらほとんど深みのない軽い歌詞だったので、それに倣って軽い歌詞にしてみた。
節目の40作品の曲としては思い入れのある作品になったと思う。