動画の「オーディオの教科書シリーズ」がデジタル再生編に
YouTubeで公開しているオーディオ関連の動画で「オーディオの教科書」というのをシリーズで制作しています。
これは、筆者の知見を体系的にまとめて、また視聴者の補足なども加えつつ保存版的に活用できる動画にしていこうという狙いです。
現在第12回までのYoutube動画を公開
スピーカー編から開始して、執筆時現在第12回までの動画を公開しています。スピーカー編の次はアンプ編で、最後にデジタル再生編としてCDプレーヤーやDAC、ネットワークオーディオなどを取り上げています。
最新の動画は「DACとUSBDACの進化と変遷」としてDAコンバーターがテーマ
動画に注目すべきコメントが寄せられた
時々、動画にコメントをいただく常連視聴者の「ピースコンタクト」さんから、技術的内容を補足するコメントをいただきました。
コメントでは、核心部分は少し前に5chに書き込んだ、とあったのでさっそく拝見。これは、5chに埋もれさせておくのは惜しいと思い、さっそく返信してその旨を伝えたところ、転載しても良いとの許可をいただきました。
というわけで、以下にその内容を転載(一部読みやすいようにリライトしました)します。
DAコンバーターのクロックに関する補足説明(5ch転載)
(以下、by ピースコンタクトさん)
デジタル機器をデジタル信号として受け渡しする場合、(中略)通常は同期、タイミング合わせが必要です。
ここに関して最初に手当てしてたのは放送業界で、ゲンロックっていう名前で、クロック入力を各機器に取り付けて、このタイミングで画と音を出せと揃える仕組みを作りました。
ここあまり詳しくないんですけど、フィルムだのビデオ機材だのの同期運転だから今の同期とは比べものにならない位荒いタイミングだったと思います。
で、ソニーがCD考えて、フィリップスを付け加えてワールドワイドっぽい装いにして大々的に売り出した、ここがデジタルと音楽の本格的スタートって訳です。
ここで登場したのがSP/DIF端子(伝送)。
※ソニー・フィリップス・デジタル・インターフェース
アナログでLR2本必要だったケーブルが1本で済む、おまけにデジタルデータの送信受信だから劣化がないという画期的技術。
こういう形で始まったから、音声のデジタルデータ、ストリームデータは、送信側が一方的に垂れ流すデータを受信側が受け取るって形で成立しているんです。
この考え方はコンピューターの絡むDTMの時代になってDTM内で制作が完結されるようになって意識されなくなったと思うけど、データを誤り符号込みで送信して受け手がミスると再送信って手続き取ると「その時にその音声データが確定しない」、これ音楽では致命的だから音声信号をストリームデータとして扱う仕組みも現役な訳です。
でですね、ストリームデータとしてデジタルを扱う時に問題になるのがクロックのずれなんです。
ようやく本題。
本当に基本的な事なんですけど、クロック周波数48kと聞くと高域周波数が、とかなりますけど、本質は1秒間に波形座標データが48000個って事なんです。
ここで機器のクロックにずれがあったらどうなるか。
送り出しが48000個送って受け手が47999個のデータ処理とか、あるいは送信48001個送って受信側48000個処理とか。
もっと微妙なずれで10秒位で1データ余っただの足りないだの。
そこでSP/DIF規格でこの程度のずれに収めないと規格外ですよな規定もあるのだけど、このクロックのずれを補正するのがPLL回路になるんです。
これものすごくはしょって言うとアナログで使われるNFBのデジタル版みたいなもので、クロックのずれを補正する訳です。
クロックのずれと言ってもずれは早い側にずれたり遅い側にずれたりと変動しているのが普通です。
これをフーリエ変換という方法でずれを周波数に分解してグラフ化する方法もあったりして、ずれ=ジッターと言いますが、有名なRMEのインターフェイスなどはPLL回路で破綻せずフィードバック掛けまくってジッター減らす技術を売り物にしてたりします。
ですがですね、ここまで書いてきて分かる人には分かると思うのですが、元々のクロックのずれはPLLでは吸収できないんです。
これをフーリエ解析的には低周波ジッターを下げられない問題と表現すると思います。
現実の機器でこれをどう処理しているのか。
ゆっくりとクロックを送信側に寄せていくんです。
高周波ジッターに関しては自機のクロックで徹底的に補正する、しかし周波数が低くなるほど補正量を低下させて9対1、8対1と自機クロックと送信側クロックの中間辺りのクロックで作動させていく。
この辺りの匙加減が、メーカーにより色々差が出てくるところと思います。
※元記事はこちらです。
百十番のクロックに関するピースコンタクトさんの解説を受けて雑感
開発メーカーの立場で、こうしたPLLに関することなどをアグレッシブに情報公開しているのが、ソウルノートの加藤さん(開発責任者)です。
以前、イベントで講演を拝聴した際に締めくくりで次のような説明をしておられました。「なぜ、こんな面倒くさいことをいろいろやっているかというと、回路からPLLを排除したいからなんです」。
ソウルノートのデジタル再生機器は
ピースコンタクトさんの解説を読むと、この加藤氏の意図がよくわかります。
辻褄合わせて気にクロックを合わせていくPLLという技術を排除した方が、高音質化に結び付くというロジックだと理解しています。
具体的には、ソウルノートは2つの対策をしていることが見受けられます。
まずはスフォルツアートと共同で、S/PDIFに変わるデジタル音声伝送方式として「ゼロリンク」を実用化し提唱しています。これは、「DVI端子を使ってプレーヤー(トランスポート)とDAC間で共通化するデジタル伝送方式」。
平たくいうと、PCMやCDの発明以来の上流のクロックに同期させていく方法ではなく、下流のDAC側のクロック信号をトランスポートに送って「共通のクロック」に同期させる方法です。
ソウルノートは、さらに外部クロックも発売
さらに外部クロックを発売しました。DAC内蔵のクロックよりも高性能なクロックを外部から再生機器に送って音質向上させる機器です。
外部クロック自体は古くから存在する機器で、本機と同様のオーディオ用10Mマスタークロック(再生時に使用するのはそれを分周したサンプリング周波数と同じかその数倍のワードクロック)が昨今では一般的となり多くのメーカーから発売されています。DACの外部クロックとしての使用が一般的のようですが、これを同時にトランスポートと同期させれば、送りだしと受けの双方が同じクロックを使うことでより音質向上が期待できるのではないかと考えています。
ラズパイオーディオでもマスターモードが話題に
ITおよびIoTの世界では、送りだし側(またはより上流接続された側)をマスターと呼び、受け側をスレーブと呼びます。
ラズパイオーディオは、ラズパイ(ラズベリーパイ)という教育用シングルボードコンピューターを専用Linuxで動かし、そのインターフェース(GPIO)に電気的にも物理的にも直結させたDACボードを重ねて使用するのが一般的です。
Raspberry Pi(ラズバイ) はハードウェアレベルでマスタークロック(MCK)を持ちません。そのため、DACボード上に水晶発振器などのクロックを搭載して一般的にはスレーブとなるDACボード上のクロックでDA変換します。
このDACボードのクロックを信号の流れとは逆にマスターとして、トランスポートのラズパイ側をクロックのスレーブとする「マスターモード」というのが、より高音質だと話題になったことがあります。
昔に戻り共通外部クロックを繋げるのが合理的?
ピースコンタクトさんの解説でいう昔のゲンクロックの時代のように、デジタル信号を扱うオーディオ機器は、共通の外部クロックで同期させるというかつてのスタジオの構成が、最も高音質になるのではないかと考えていますが、どうなのでしょう?
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