過去に似たコンセプトで「国民機構想」という記事を公開しました。
この第二段のシステムを最近再現したところ、絶好調!
そこで、以前は「自作真空管アンプ」に拘った内容だったのですが、10数年たった今、自作でなくても再現できるご機嫌のオーディオシステムを検討してみようということにしました。
まずは、両立させるコンセプトとメリット
両立とありますが、それに加えて、当サイトが提唱する「真空管オーディオ」という要素を加えますので、実は3つの大きなメリットを実現するというのが狙いになります。
その3つのメリットとは
- ホームシアターのAVシステムとして、映画など映像鑑賞において、最新の映像音響技術に対応している
- 映像を伴わない、純粋なピュアオーディオシステムとしても使用できる
- ハイエンドオーディオでも、ますます存在感を増す真空管アンプでの再生
というものです。
こうした考え方による組み合わせは、販売店などでは決して提案されない(思いつかない)事例だと思います。
ますます発展するAVシステム
75インチテレビなど、大型テレビが現実のものとなり、プロジェクターもますます高性能化しています。一方で「Dolby Atmos」、「DTS:X Pro」、「IMAX DTS」、「IMAX DTS:X」、「Auro-3D」などなど、映像音響技術も進化し続け、今時のAVアンプはそれらに対応し13.2chにまでなっています。
さらに、オーディオ系の「ネットワークオーディオ」「ストリーミング再生」「Bluetooth」「DSDを含むハイレゾ再生」などにも対応しています。内蔵するDAコンバーターも、ピュアオーディオの製品とそん色有りません。
ホームシアターとオーディオリスニングルーム、あるいはそれぞれのシステムを別個に構築できれば理想なのですが、同じ部屋で融合したシステムにしたい、というニーズも少なからずあるかと思います(10数年前の私がそうでした)。
ハイエンド系オーディオイベントでも真空管アンプが増加
先日、コロナで軒並み中止や延期が続いていたオーディオイベントの中で、東京国際フォーラムで例年開催されていた「東京インターナショナルオーディオショウ」が復活開催されたので行ってきました。
こちらに関しては、Youtubeで詳しくご報告しています
このイベントは、以前は「輸入オーディオフェア」という名称で開催されていたもので、海外ハイエンドメーカーの機器を扱う輸入商社と、マランツ・DENON・ティアックなど自社製品に加えて海外メーカーの販売も行うオーディオメーカーが中心となって開催されているイベントです。
スピーカー、アンプなど、それぞれが数百万円の機器を高価なケーブル類で繋ぎ合わせると、1千万円以上になるのも珍しくないシステムが試聴できるという豪華な(しかも無料)イベントです。
私は、サボった年もありますが20年以上、このイベントに通っています。この20年の変化といえば、かつては過去の遺物として製品が消え去りかかったアナログ盤再生機器(ターンテーブルなど)と真空管アンプが、年を追って復活していることだと思います。
海外でもこうした傾向は、中長期的変化として確実に進んでいるようです。
当サイトで長年提唱してきた「真空管オーディオ」は、少なくともハイエンドでは(実は中華アンプなどローエンドでも)勢力を拡大していると考えています。
3つのメリットを実現させる意義は
ホームシアター用のAV機器は、一般オーディオよりも現在では市場が大きく、世界中で販売できるため勢増ロットが多いという事で実は抜群のコストパフォーマンスを含んでいます。
ピュアオーディオやハイエンドオーディオは、その逆で、限られた数のマニアや富裕層に販売が限られるため、少量生産の上、宣伝費や販売費の負担も大きく、コスパは悪くなります。
映像ソースとオーディオを一つのシステム、一つの部屋で両方とも高いクオリティで再生できるという利便性に加えて、両者の良いとこどりをすることで、費用対効果も抜群に向上すると考えています。
具体的なシステム組合せ例を考えてみよう
能書きばかりでは面白くないので、具体的なシステムを2例考えてみます。どちらも音楽再生が楽しめるクオリティは維持しつつ、ハイエンド機器を組み込んだ高価な例と、コスパに拘った低価格の例を考えます。低価格といえども、真空管オーディオを含めますので、安価なデスクトップオーディオのようなトータルコストにはならないと思いますが。。
ハイエンドシステムの例
AVアンプ「DENON:AVC-X8500HA」、希望小売価格(税別):¥500,000
最新、ハイエンドのAVアンプです。主な最新映像音響技術は備わっています。
なぜ国産かというと、ワールドレベルでも日本のAVアンプは高く評価され、高い市場占有率も維持しています。製品開発も熱心で最新機能に対応させる努力を怠りません。国産でも最近はこの分野で強かったオンキョーが事実上の終了となってしまいましたが、まだまだ、DENONに加えてマランツ、YAMAHA、ティアックなどは元気です(以前はここに、パイオニアとかビクターもありましたが残念)。今回は、私が使用しているシリーズの後継ということでDENONを選択しましたが、他社でも充分OKかと思います。
メインスピーカー「SPENDOR Classic100」、希望小売価格(ペア)(税込)¥1,320,000
このスピーカー(シリーズ含む)を選んだ理由は、ズバリ、音質です。次の真空管アンプとの組み合わせで、東京インターナショナルオーディオショウ2021で聴いた中でもずば抜けていて、近年あちこちで聴いたシステムの中でも最高レベルだと自分自身が感じたためです。自信を持ってお薦めできます。
ただし、専用スピーカースタンドが別売りで、希望小売価格(ペア)(税込)110,000円となっています。
真空管アンプ(フロント2ch)「TRIODE:TRZ-300W」、希望小売価格(税込)¥528,000
上記と組み合わて聴いたアンプが、こちらです。真空管アンプの中でももっとも有名で人気の高い直熱三極管300Bを4本出力管として使います。
単純に、同じ出力管4本そろえれば良いわけではなく、真空管は個体差が大きいので、類似特性のものを選別したクワッドマッチというものが必要です。その内、1本故障したら4本買いなおしかと心配になりますが、このクラスになると、オーナーの寿命より耐用年数が長いともいわれます。まあ、とにかく豪華な使い方ですね。
実際に空気録音しましたので、参考にして下さい。
出力管を4本使うのは、一般的には「プッシュプル」なのですが、こちらは「パラシングル」です。製品も自作例もプッシュプルより格段に少なくなります。制作側としては、せっかく4本使うのだからシングルアンプとは別の持ち味にしたいと思ってしまうからではないかと思います。
回路見ていても、シングルとほとんど同じなので「何だかなあ」と感じますね。しかし、実際に作ってみると、シングルやプッシュプルにもない別の魅力がある、という記事を以前技術誌て読んだことがあり、私は安い球(50BM8)で試して大成功(自己満足?)した経験があります。
リアスピーカー「Stirling-Broadcast – LS3/5a-V2」、希望小売価格(税別):¥280,000
リアスピーカー(RRとRLの2ch)は、フロントスピーカーのルーツである銘機「LS3/5a」を組み合わせます。このスピーカーは、当サイトの製品研究でも取り上げており、間違いない選択だと思います。低能率ですが、フロント以外は強力なAVアンプの内蔵アンプで駆動しますので問題ありません。
ホームシアターでも、すべてのスピーカーを同一にしないと気持ちが悪いという人がたまにいますが、その場合は、フロントと同じものを使用しても当然構わないのですが、アンプも同一条件にするかという選択肢が生じますが、当サイトとしてはユーザーの判断に委ねます。
※複数メーカーからも販売されていますが、スペック(インピーダンスやバイワイヤ接続の有無など)が微妙に異なります。
その他の選択肢について
スピーカーケーブル、電源ケーブル、インシュレーターなどアクセサリ類は、お好みで選択して良いと思います。
また、この状態ではスピーカーが4本の4.0chとなります。このクラスの組み合わせでは定位も低音もしっかりしていますので、センタースピーカー、サブウーハー、その他のサラウンドスピーカーは省略しても映画鑑賞に問題ないと思います。音楽は、(一部のサラウンド音源を除き)フロント2chのみで聴く事を前提としています。
映画の爆発音や高度な映像サラウンド再生を行いたい場合は、別途それらのスピーカーを追加して良いと思いますが、あくまでも音楽は、AVアンプのDSPをスルーしたピュアモードで再生します。ここで、いろいろ試した結果、DSPによるデジタルイコライジングなどを使った音楽再生が好きという場合は、それでも構わないのですが、ピュアオーディオマニアの立場からすると、それはどうかという観点もあり悩ましいところです。
DSPを使った場合は、「ピュアオーディオとAVシステムの共存」ではなくなり「映像音響技術による音楽再生」となり、趣旨も変わるうえに、多くのオーディオマニアは私も含めて、その方法は人工的に加工された音と感じて飽きがくるという経験を持っています。
どこにメリットがあるのか?
この組み合わせは、高価なフロントのスピーカーと真空管アンプを、オーディオとAVシステム再生で兼用できるという利便性、合理性がまずメリットとして挙げられます。
つぎに、オーディオシステムとしてみた場合、最新のAVアンプは、ストリーミング再生など柔軟な音源に対応できるというメリットもあります。オーディオシステムでこれを達成する場合は、ネットワークプレーヤーやネットワークブリッジという機器を別途組み込む必要性がありますが、その必要がなくなるわけです。
さらに、上記でDSPを使わない前提としましたが、例外的に、ピュアオーディオでも「周波数特性のデジタルイコライジング」や、「デジタルのチャンネルセパレート」「サブウーハーの併用」は行われる場合もあります。DSPでも、こうしたオーディオ的な活用は試してみる価値はあると思います。ルームアコースティックの観点でどうしても改善できなかった定在波の悪影響の緩和など、この結果が良ければそれもメリットとなると思います。そうしたことが試せる、つまり、選択肢が増えるというのはメリットとして大きく評価できるのではないでしょうか。
最期に、オーディオシステムとしてみた場合、AVアンプはプリアンプ(またはコントロールアンプ)という位置づけとなります。13.2chを駆動するだけの電源回路を有した機器に純粋なプリアンプとしての回路だけをONにしてその他の機能をOFFまたは使用しない訳ですので(ピュアダイレクトモード)物凄く電源に余裕のあるプリアンプとなり、そのプリアンプで真空管アンプをパワーアンプとして駆動するというのは、かなり理にかなった高音質テクニックであると考えています。
ハイエンドシステムの総額は
ケーブル、アクセサリを除く最小セットの総額は、スピーカーとAVアンプとサラウンドスピーカー1組で、¥2,706,000(税込み)となります。
これに、スピーカースタンドや、別売りのプレミアム真空管(WEだと¥101,200高くなります)、ケーブルやアクセサリなど、場合によっては、アナログ盤再生機器を加えますので、およそ300万円前後のシステムとなります。
あくまでも、ハイエンドの世界としては、まだ余裕があるという考え方もできますので、更に映像音響関連の機器を加えるというのも、非現実的な話ではないと思います。
使いこなしについて
ピュアオーディオシステムとして使用する場合
AVアンプと、真空管アンプ、そしてフロントの2つのスピーカーのみを使用します。
AVアンプの豊富な入力ソース機能を活かして、AVアンプを音源セレクトのセレクターと音量ボリュームを使用しますが、DSPやその他のスピーカーを使用しない「ピュアダイレクトモード」にします。つまり、DAC(場合によってはネットワークプレーヤーやBluetooth受信機)兼プリアンプとして使用する訳です。
AVアンプのプリ出力(音量コントロール可能な出力)に真空管アンプを接続しますが、真空管プリメインアンプのTRZ-300Wのプリ部はスルーして「MAIN IN入力端子」に接続することで、パワーアンプとして使用することができます。
ピュアオーディオとして使用する場合、AVアンプのAVC-X8500HAのパワーアンプ回路と真空管プリメインアンプのTRZ-300Wのプリアンプ回路をお休みさせるという贅沢な使い方をするわけです。
オーディオの場合、折角の機能を使わないのは勿体ないという要素よりも、休ませることで電源回路の負担を下げ、良い結果となるという風に考えます。
あくまでもこれを基本として、前述のデジタルイコライザやサブウーハー、サラウンド再生は応用的に使用したい場合にはそれもあり、という使い方をします。
リーズナブルなシステムは後編にて
いきなりハイエンドなシステムをご提案してしましましたが、ご安心ください。私自身、ハイエンドではなく中級や自作を中心としたオーディオマニアですので、リーズナブル(ハイコストパフォーマンス)なシステムも提案させていただきます。
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