【なぜ?】世界でJ-POPがバズっても、あの名曲がストリーミング解禁されない悩ましい事情について

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我々オーディオマニアは、QobuzやTIDAL、Amazonなどのハイレゾストリーミングで、オーディオリスニングするのが、すっかり定着しました。

ところが、Amazonを除く他の配信は、J-POPのラインナップが物足りないという不満を抱えています。

近年、日本のポップス(J-POP)が海外でかつてない熱狂を生み出しています。SpotifyやApple Musicを覗けば、シティポップ、90年代J-POP、アニメやボーカロイド関連の楽曲が、時に数億回という驚異的な再生数を叩き出しているようです。

あの権威あるNHKでも、この現象が報道され(クローズアップ現代「70年代曲から令和アイドルまで J-POP新潮流」)ています。政府もコンテンツ輸出を車に次ぐ大型輸出産業に育てる計画と報じられました。

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しかし、その一方で音楽ファンからはこんな不満の声が絶えません。

「なぜ、あの有名アーティストの代表曲がSpotifyに無いのか?」

特に、90年代の音楽シーンを牽引したエイベックスや、70年代からの膨大なカタログを持つフォーライフなど、一部のレーベルやアーティストの作品において、未だに「空白」が存在しています。このジレンマはなぜ生まれるのか、オーディオと音楽ビジネスの視点から紐解いていきましょう。

海外のJ-POPファンからの不満の声

昔のエイベックス作品がSpotifyに無い、日本国内だけ配信、Apple MusicにはあるがSpotifyには無いといった不満が以前から少なくないそうです。

安室奈美恵のケース

よく話題になるのが「安室奈美恵」です。

彼女の楽曲は一時期ストリーミングに存在していましたが、その後大部分が配信停止されました。理由は公式発表されておらず、

「本人側の意向」「権利処理」「契約上の問題」などが推測されています。確定情報はありません。

海外ファンからは「エイベックスはまず安室奈美恵を戻してほしい」という声がネット上にも非常に多く見られるようです。

実は「ストリーミング嫌い」ではない

まず大前提として誤解されがちなのが、「日本のレコード会社がネットやストリーミングを敵視している」という説です。

実際には、現在のレコード会社(特にSONYなど)はデジタル配信や海外展開を最重要の成長分野と位置付けています。エイベックスをはじめ、多くのレーベルがここ数年で一気にカタログを解放してきました。

問題は、「過去の作品ほど、現代のシステムに乗せるためのハードルが高い」という説です。

CD時代の「複雑怪奇な権利処理」

1990年代から2000年代前半、日本の音楽業界の中心は圧倒的に「CD」でした。当時の契約書における主な収益源は以下の通りです。

  • CD販売・レンタル
  • テレビ・ラジオでの放送
  • カラオケ、着うた

Spotifyのサービス開始は2008年。つまり、当時の契約書には「全世界向けストリーミング配信権」という概念すら存在していません。

いざ配信しようとすると、レコード会社、アーティスト本人、所属事務所、原盤権者、音楽出版社など、無数の権利者と再契約を結ぶ必要があります。古い作品ほど権利関係が分散・散逸しており、この法務的な確認作業だけでも膨大な時間と労力がかかります。

これが、配信したくてもできない理由だそうです。しかし、それはどこのレコード会社やプロダクションも同じはず。なぜ、この2社だけがという理由が残ります。以下にもいい訳ですね。現にAmazonには配信している例が多いです。
Amazonは、今ではCDの流通最大手ですので、CD販売の点からも怒らせたくないのかもしれません。

Amazonは、オーディオマニアからは、他のストリーミングと技術方式が違い、簡単に対応できないという別の悩みがあります。

山下達郎は配信嫌い

アーティスト本人が配信を拒否している有名な例は、山下達郎でしょう。彼は信念を持って配信を拒否しているという事が知られていますね。

ガラパゴス化した「最後までCDが売れた国」

欧米では2000年代にCD市場が急速に縮小し、いち早くデジタルへと移行しました。しかし日本は少し事情が異なりました。

  • アイドル商法や特典付きCD
  • 握手会やイベント参加券
  • 熱心なファンクラブ文化

これらにより、日本では長期間にわたって「フィジカル(CD)」の巨大な売上が維持されてきました。そのため、「ストリーミングを全面解禁すれば、利益率の高いCDの売上が食われる(カニバリゼーション)」という懸念が業界内に根強く残り、結果として世界市場からの遅れを招いた側面は否めません。

これによる、海外と比較した日本の音楽産業の遅れは、NHKの番組でも紹介されました。

老舗レーベルが抱える「音源管理」と「リマスター問題」

フォーライフのように、1970年代から90年代の貴重なカタログを多数保有するレーベル特有の事情もあります。ここではオーディオ的なハードルが立ちはだかります。

  • マスターテープの劣化: 数十年前に録音されたアナログテープは、経年劣化で癒着していることも多く、再生前に熱処理(ベイク処理)を施すなど、慎重な修復作業が必要です。
  • 現代仕様への最適化: 現在のストリーミングはロスレスやハイレゾ配信が標準化しつつあり、単にデジタル化するだけでは現代のリスナーの耳に耐えられません。優秀なマスタリング・エンジニアによる再調整が不可欠です。

このように、「過去の音源を現代の高音質環境で蘇らせる」には莫大なコストがかかります。見込める再生収益とリマスター費用を天秤にかけた際、どうしても後回しになってしまう名盤が存在するのです。

こうした問題に、AIを活用した処理の効率化は望めないものでしょうか?

アーティスト本人の「音」と「見せ方」へのこだわり

配信されない理由は企業側だけでなく、アーティスト自身の意向が強く働くケースもあります。前述の山下達郎ほどの信念でなくても、事務所の時代錯誤のそろばん勘定など、いろいろとハードルがありそうです。

  • アルバム単位でのリスニング志向: 「曲単位での切り売りや、シャッフル再生を好まない」という音楽的信念。
  • 音質への妥協のなさ: 「圧縮音源での配信は自分の意図したサウンドではない」というオーディオ的こだわり。
  • 活動休止中や引退したアーティストの、独自の美学やイメージコントロール。

これらが複合的に絡み合い、結果として「全曲未配信」や「一部アルバムのみ未配信」といった状況を生み出しているという説が多いようですね。平たくいうと、もっともらしい理屈をつけて、ということですね。

名曲たちは再び世界へ羽ばたくか?

海外でJ-POP人気が高まっているにもかかわらず、一部の楽曲がストリーミング配信されない背景には、「複雑な権利処理」「CDビジネスの残滓」「デジタルアーカイブ化のコスト」、そして「アーティストの信念」が絡み合っています。

しかし、時代は確実に変わりました。TikTokやYouTube Shortsを起点に、かつては国内の限られたファンしか知らなかった楽曲が、世界中で再発見され継続的な収益を生み出す錬金術が証明されたからです。

オーディオの進化により、過去のマスター音源がハイレゾや空間オーディオとして息を吹き返す事例も増えています。「なぜこの名曲がSpotifyに無いのか」と私たちが嘆く期間も、そう長くは続かないかもしれません。日本の豊かな音楽遺産が、最高の音質とともに世界中のリスナーの耳に届く日を期待して待ちましょう。

おまけ「海外ファンがストリーミング解禁を熱望している日本人アーティスト8選」

山下達郎と安室奈美恵以外にも、海外から特に要望が多いアーティストを調べてみました。

マキシマム ザ ホルモン(MAXIMUM THE HORMONE)

【ジャンル】ラウドロック / ミクスチャー 『DEATH NOTE』や『チェンソーマン』など、世界的ヒットアニメの主題歌を手掛けており、海外のリアクション動画でも圧倒的な人気を誇るロックバンド。 しかし、彼らも極端な「フィジカル(CD・アナログ)至上主義」を貫いています。「歌詞カードを読み、パッケージを開ける体験も含めて音楽」というスタンスから、意図的にストリーミングを制限しています。海外のアニメファンからは「Spotifyで彼らのプレイリストを作れないのが最大の苦痛」と嘆かれています。

SMAP

【ジャンル】アイドル / ポップス アジア全域で社会現象を巻き起こした伝説のグループ。日本のアイドルカルチャーの金字塔ですが、ストリーミングには未対応です。 かつての所属事務所(旧ジャニーズ事務所)の厳格なデジタル化NGの方針の名残や、解散に伴う複雑な権利処理が背景にあると見られています。『夜空ノムコウ』や『ダイナマイト』など、良質なブラックミュージックや海外のトレンドを取り入れた楽曲も多く、音楽的評価も高いため、全カタログの解放が待たれます。

CHAGE and ASKA

【ジャンル】ポップス / ロック 1990年代、日本国内だけでなく台湾や香港などアジア圏でスタジアムライブを成功させた、アジア進出のパイオニア的存在。 『SAY YES』や『YAH YAH YAH』など、90年代のメガヒット曲の多くがストリーミングで聴けない状態が続いています。過去のマネジメントの問題やメンバーの個人的な事情が絡み合い、権利の許諾がストップしている状態です。アジアの40代〜50代のリスナーからの「青春の音をもう一度」という声は絶えません。

MALICE MIZER(マリスミゼル)

【ジャンル】ヴィジュアル系(V系) GACKTが在籍していたことでも知られる、90年代ヴィジュアル系の伝説的バンド。ヨーロッパを中心に、日本のV系カルチャーはカルト的な人気を誇ります。 インディーズ時代とメジャー時代で原盤権の所在が異なり、特に世界的に需要の高いメジャー期の傑作アルバム(『merveilles』など)が、海外のプラットフォームではおま国(リージョンロック)状態になっていることが多く、海外のゴシックファンを悩ませています。

角松敏生(Toshiki Kadomatsu)

【ジャンル】シティポップ / フュージョン 山下達郎と並ぶ、80年代リゾート・ポップスや和モノ・ブギーの最重要人物。 一部の再録音源や近年のアルバムは配信されていますが、海外のDJやトラックメイカーが血眼になって探している80年代のオリジナル音源(『AFTER 5 CLASH』など)がストリーミングで網羅されていません。緻密に計算されたリズムマシンと生楽器のグルーヴは、現代の高音質ストリーミング環境でこそ真価を発揮するはずのカタログです。

少年隊(Shonentai)

【ジャンル】アイドル / ダンスポップ 近年のシティポップ文脈で、世界中のDJから「恐ろしくクオリティの高い和製ディスコ・ファンク」として再発見されているのが少年隊です。 『君だけに』や『デカメロン伝説』など、筒美京平ら超一流の作家陣が手掛けたサウンドと、ブラスやストリングスの生音の重厚さは、現在の基準で聴いてもオーディオ的快感に溢れています。しかし、こちらもSMAP同様に権利の壁に阻まれ、デジタル空間にはほとんど存在していません。

菅野よう子(Yoko Kanno)の一部アニメサントラ

【ジャンル】サウンドトラック / アニメ 『カウボーイビバップ』や『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の音楽で、世界的コンポーザーとなった菅野よう子。 主要作品の多くは近年ようやく解禁されましたが、90年代〜00年代に手がけた膨大なアニメ・ゲーム音楽の中には、未だにサブスク未解禁のもの(『マクロスF』の一部やマイナー作品のスコアなど)が散在しています。原盤権がアニメ制作会社、レコード会社、放送局などに分散している「アニソン特有の権利の迷宮」が原因です。

任天堂サウンドチーム(オリジナルゲーム音源)

【ジャンル】ゲーム音楽 『スーパーマリオ』『ゼルダの伝説』『ドンキーコング』など、世界で最も聴かれている「日本の音楽」と言っても過言ではありません。 しかし任天堂は、自社のIPを守るためにSpotifyやApple Musicといった汎用ストリーミングサービスへの楽曲提供を頑なに拒否しています(※独自の音楽アプリを展開するなどの独自路線を歩んでいます)。コンポーザーの近藤浩治らの作り出したサウンドスケープは、ゲーム音楽の枠を超えた電子音楽の歴史的価値がありますが、汎用プラットフォームで気軽にプレイリストに組み込めないのが現状です。

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