オーディオ機器にはハイエンド機からエントリー機まで、普通についているTOSLINKの光デジタル接続端子(オプティカル)。HiFi専用機でなくても、TVとかHDDレコーダーとか、家電製品にも昔から付いていますね。
しかし、これをメインで活用しているというマニアはほとんどお目にかかりません。家電機器との接続にサブ的に使うという話がほとんどです。以前はオーディオ誌などでも同じS/PDIFの同軸デジタルとの比較試聴というような記事も見かけたのですが、内容はほとんど同軸デジタルの圧勝で、そもそもオーディオグレードの製品があまりありません。
さらには、ハイレゾ時代になって、同軸デジタルよりも上位の規格の対応力が弱いので、オーディオマニアからますます影が薄い存在になっています。なぜそうなったのか?今回はこれにフォーカスしてみました。
Facebookのオーディオグループで、グループ仲間のKさんが報告してくれました
以下、Kさんが過去に調べた内容の報告ですが、よそではあまり見聞きできない話なので、許可を得て転載させていただきました。
——ここから転載
まず、TOSLINKでTVとオーディオを接続している話題で、Kさんから書き込みがありました。
「ボクの環境では高周波ノイズは回避出来ているので、光⇄デジタルの変換時に起きる下位ビット落ちの弊害のほうを気にしているのです。一般的にはそれもほとんど知られていませんね。高級オーディオがTOSLINKを採用しなくなっていったのはそれが理由なんです。」
TOSLINKの下位ビット落ちというのは、初耳だったので、当方から詳しい解説サイトがないか問い合わせた返答が以下となります。
「それがボクにも見つからないんです。探しベタなだけかもしれませんが。ご要望にピンポイントで応えられず ごめんなさい。
20数年前、TOSLINKが“全盛”でミニコンポから高級オーディオまでも席巻していた時代に、『確かにTOSLINKはノイズレスで誇張が無く素直な帯域バランスなのに、なぜアンビエントな位相情報がゴソッと抜け落ちているのか?』と言う議論があって、ボクも当時、懇意の某評論家さんや某オーディオメーカーの技術者さん(実名は避けさせてください)、そして音響工学の大学教授に尋ねたりして、「K君もこれ読んで勉強しなさい」ってEIAJ OPTICAL(TOSLINKの正式名称、TOSLINKは商標です)の計測データも併載した学術論文をいただいたことで理解しました。
そこでの結論が『下位ビットデータの欠落が見られる』だったんです。」
ここからは、話がEMCに変わりますが、折角なので転載しておきます。
「では。『それなら、高周波ノイズ回避はどうしたらいいの?』と言う次の問いかけで出てきた言葉がEMC(電磁両立性)対策です。
それが後のEMC設計の仕事になったり、ボクのオーディオの基本にもなったんです。
(アコリバの石黒さん邸でもされている工事なのでご存知ですよね。)
シンプルな機器だけのシンプルな伝送構成にするために何をすべきかは、本当は大元の電源から対策しないとダメなんです。オーディオは”足し算”ではなく“極限まで引き算すること”だと考えています。」
——–転載終わり
Kさんとは異なるNさんからのご意見提示(2024.3月加筆)
本ブログを閲覧頂いたSNS仲間のNさんから、Kさんとは違う意見や詳しい情報をいただきました。今回のテーマ自体、過去には盛んにマニアの世界で議論されたりオーディオ業界で話題になった時代もあるようですが、今となってはネット上でも詳しく調べるのが大変になっています。そのため、多くの角度、異なる意見をご紹介し今後に役立てたいと考え、ご本人了解の元、紹介します。
———ここからNさん提供文
ループバック録音でビットパーフェクトが確認できる
『下位ビットデータの欠落が見られる』は、ニワカには信じ難い説と感じています。私はTOSLINKを使ってループバック録音を行う事が(ビットパーフェクトの確認の為)ありますが、TOSLINKが原因でデータが欠落した事は今まで経験がありません。大抵はソフト側の設定ミスが原因。
また、最近の WiiM や WiiM pro といった TOSLINKを搭載している新製品が『ビットパーフェクト』を標榜している事からみても「TOSLINKは下位ビットが欠落する」という内容の発信はアンビリーバボー(個人の感想)です。仮にもし欠落する事が真実ならば WiiMは非難の的になってしまうのではないかと心配になってしまいます。
SPDIFはPCMデータが生で流れている訳ではなくて、左音声・右音声・クロックをゴッタ煮にして更にバイフェーズで “1本” の ケーブルに流れくる訳で、そんななか下位ビット “だけ” が 欠落する事の方が技術的に難しそうに思っています。。。『下位ビットデータの欠落が見られる』という学術論文? 見てみたいです。 きっとある特定の条件下で見られる現象で、オーディオファイル宅で簡単に再現する問題ではないように想像していますが。
TOSLINKの音質的課題は、一定の答えが2007年頃に
TOSLINKの音質がイマイチなのは一定の答えが2007年頃に出ています。
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原因①:
メーカーの受光部の回路設計が不適切。ノイズ除去の為のLCが問題。
(皆、一様に 47μHを採用している”データシートがそうだから仕方ない”が、これをズラせば、音質は向上して極めてメタルと等しくなる。)
原因②:
TOSLINKによる伝送はメタル伝送よりも、SPDIFを受信するレシーバーICが復調するクロックにジッターが多い。よって音質がよろしくない。
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①については「趣味の工作」さんの『光S/PDIFの音質低下問題』(‘09,06,07 初稿)
で詳細に解説されています。オリジナルのso-netの領域は消滅してしまいましたがweb.archive.orgで閲覧できます。
②については「EDN Japan」様の記事『オーディオ品質とクロックジッター』(2007年09月01日公開)で詳細に解説されています。著者は日本TIに在籍(当時)されている技術者さんのようなので信頼性は高いです。下記ページから閲覧できます。
このように一般的には?TOSLINKがメタルより音質がよろくない原因は・・・『ジッターであろう』というのが一つの回答です。私も全てを理解している訳ではありませんが、私にとってTOSLINKの音質がよろしくない話題は “謎” ではなくて ”答えが出た問題” であり、『ジッターが要因』というconclusionに 私は 納得しています。
TOSLINKは、192/24に対応した転送速度が出ない
Kさんの説では、TOSLINKの音質的課題の原因がビット落ちであったとされていますが、私はそれを信じていません。私見では、標準的なTOSLINKでは 24bit/192kHzフォーマットを転送できないという問題が足を引っ張ったものと想像しているところです。
TOSLINKで 24bit/192kHzフォーマットを再生しようとすると 送り出し側/受信側 の双方で 、25Mbps程度の伝送速度が必要なのですが、標準的なTOSLINKユニットでは最大 15Mbps程度の能力しかありません。これは 24bit/96kHzがやっと再生できる程度です。ハイレゾも? 一般的になった昨今ではこれは致命的。(個人の感想です)
メーカーは「192kHz再生でノイズが出るんだけど!?」というクレームが嫌で、高級機にTOSLINKを装備しないのではないか?というのがの私見(仮説)です。高級機が 伝送速度25MbpsのTOSLINK素子を装備しても、ユーザーが所有の光の送り出し側の機器が 旧態依然の 伝送速度15Mbpsであると、192kHz再生はおぼつかない。 音が出ないならまだしもブツブツ再生になってクレームになりやすい(かも)。
この問題はメタルなら発生しません。TOSLINKの「送信モジュール」「光ケーブル」「受信モジュール」の3点のパーツが25Mbpsを達成して初めて 24bit/192kHz再生が可能になるのでした。再生できない場合、そのいずれかが問題ですがメーカーサポートではどれが原因か調べる事は難しく、ユーザー側の技量が問われます。
近年はSFPというものもの出てきて、「光」というカテゴリーでは SFP と TOSLINK は同じ。コネクタの形以外に TOSLINK と SFP とでは何が違うのか?意識される人は少ないかもしれません。繰り返しになるかもしれませんが、伝送速度の上限が “桁1つ~2つ” は 優に違っているのが TOSLINK と SFP の 差 です。
参考までに下記に東芝のTOSLINKモジュールと、FS JAPAN株式会社のSFPモジュールのスペックを引用紹介してみます。
Accuphase社のフラッグシップ?のDC-1000は TOSLINK入力2系統
参考までに Accuphase社のフラッグシップ?のDC-1000は TOSLINK入力2系統、同出力1系統を有しています。「高級オーディオがTOSLINKを採用しなくなっていった」とは言い切れないと考えています。 Accuphase社は DP-750などSACDプレーヤーにもTOSLINK搭載です。
近年では SPDIFから復調されたクロックで再生するのではなくて、44.1kHzと48kHzそれぞれ用に用意された水晶発振器が源流のクロックを使って再生するSPDIF由来のジッターに対する・・・ジッター対策が実施された機器が少なくありませんので、10年以上前の 「TOSLINKの音がよろしくない」という現象は実際の耳に感じにくくなってきている・・・状況も、 S/PDIF や TOSLINK の 理解が難しい要因の一つかもしれません。
———Nさん提供文終わり
以前から聞いていたTOSLINKの問題点
オーディオ技術誌の解説だったか、詳しい方の掲示板への書き込みだったか信憑性の高い話として聴いた話があります。
TOSLINKは、家電製品にも使われる大量生産の部品ユニットなので、コストの面から東芝だったか数社しか供給していないそうです。電子部品は、コスパ競争が付きまとうので、これは良くある話ですね。
結果、家電レベルのジッターの乗りやすいHiFi再生としては低品質なものが多いそうです。オーディオ専用機にはましなものが採用されているとしても、性能はそこそこで、送り出しが家電クオリティだと結局たいした音質にはならない。という話でした。
光ファイバーは、最近ネットワーク再生でLANに活用して好結果の報告をよく聞きます。
TOSLINKも、光信号変換によって、送り出し機器の電気ノイズ・電磁ノイズが伝わらないというメリットに加え、グランドを共有しないという優位性があるのに、勿体ないですね。
以前も、TOSLINKについてグループ仲間に教えてもらいました
TOSLINKのデメリットを2つ指摘してもらいました。
一つは、光ケーブルの中の光の反射がランダムになるため、反射が多い信号と少ない信号が混じりその時間差でジッターが多くなる(波形がにじみ太くなる)という話です。その対策でマルチコアケーブルというのがあるそうですが、そちらについての詳しい知見はありません。
もう一つは、既述の部品ユニットの件と共通した要素として、変換素子のノイズが大きくて、ノイズ対策をかなりしっかりしないと結果的に音質上は同軸に及ばないという話です。
※Nさんの情報に共通していますね。
まだまだ不勉強で謎が多く、ネット上のも情報が少ないので、何かご存知の方はコメントにて補足お願いします。
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