2018年11月に発売されたネットワークプレーヤー/DAC
Meridian(メリディアン)は、1977設立のイギリスの実績あるオーディオメーカー。日本の国内代理店は、ハイレス・ミュージック株式会社となっている。
ジャガー、レンジローバー、マクラーレンなどのカーオーディオ用DSPやドルビー社の音声フォーマットの開発も手掛ける高い技術レベルと、ハンドメイドによる丁寧な製造がその特徴になっている。より伝統的なメーカーと違って、プログラミングなどデジタル領域の技術に強みを持っていることが伺える。
Meridian218は、一般的なネットワークプレーヤーと違い、LANケーブルによる入力はRoon(専用の伝送規格RAAT)にしか対応していない。DLNAやAirplay、オープンホームといったLANによるオーディオ伝送規格にもBluetooth(ブルートゥース)、USBDACにも未対応だ。ただし、同軸と光ケーブル(Toslink)のS/PDIF入力には対応しているためDAC(D/Aコンバーター)としては問題なく使用可能になっている。
本記事執筆時点の、楽天市場の国内価格は、137,500円 (税、送料込み)。
具体的にはどんな製品?
Meridianは、新しいハイレゾ規格のMQAを開発した企業だ。別のメーカーがMQAに対応するためには、Meridianからライセンスを受ける(有償)必要があるが、Meridian218は開発元自らが手掛けるDACということになる。
MQA対応のDACは、フルデコード機とレンダラー機(別にコアデコードのプレーヤーソフトなどを必要とする)があるが、当然ながらMeridian218はフルデコード対応である。
統合音楽再生ソフトであるRoonのユーザーであれば、LANケーブルで繋げば純正のRAATによってMQAを含めたデジタルファイルやストリーミングの音楽再生が可能となる。Roonの用語では「Roon Ready」対応DACということになる。ただし、高度なRoonユーザーは、RAATを使わずHQプレーヤーやDiretta(日本製のため主に国内ユーザー)という別の伝送方法を導入している傾向があり、RAATの音質的優位性に現状では(バージョンアップなどの改善に熱心なため将来はわからない)やや疑問が残る。
今時のDACにしては、USB入力がないのに加えてDSDにも未対応。MQAではない音源を再生する場合の最大規格も、同軸のみ最大192kHz/24-bitだが、ToslinkやLANは最大96kHz/24-bit。MQAを前提としなければ非力な内容になっている。
トータルすると、MQA再生を重視するユーザー向けと考えられる。
なお、同社独自の入出力規格Meridian SpeakerLink 出力( Meridian DSPスピーカーへの接続専用)というのも備わっているが、特殊なので割愛する。
一方で、プリアンプ機能が搭載(ADコンバーターによるデジタルプリ)されており、音量とDSPによる音質コントロール可能なアナログ入力が付いている。
機器本体に操作スイッチはなく、別売りのリモコンを付けるか、スマホやタブレットに専用アプリをインストールして入力切替や音量の操作を行う仕様になっている。
なお、搭載されるDACチップについては、公表されていない。
音質面での技術的特徴
DACとして音質を左右する特徴的な技術がいくつか搭載されている。
まずは、オリジナルのデジタルフィルター。大方のDACチップを使用した製品は、DACチップメーカーが開発した数種類のデジタルフィルターから選択するか可変できる設定になっているのに対し、自社開発のフィルターに限定した再生に特化している。当然、自社のフィルターに自信を持っているメーカーならではで、MQAの開発技術を基にした、同社上位機の技術が使われている。
これは、他のメーカーにはない音質を意味するので、Meridian218の導入を検討する場合に最重要な要素だと考えられる。
こうした、同社の評価の高いハイエンドDAC「Meridian Ultra DAC(定価250万円)」の技術が投入されているのは、独自のクロックシステムやアップ・サンプリング方法、そしてジッター低減のためのFIFO(First In、First Outメモリを複数個投入)バッファリングシステムなどである。さらに、プリアンプ機能のDSPも上位機譲りの自社開発だ。
国内の評価は
まず、ステレオサウンド誌の「StereosoundOnline」では、評論家の山本浩司氏による試聴テストを行っている。同じくミドルクラスのネットワークトランスポーターLUMIN U1 MINI(280,000円、税抜、Silver)と組み合わせた試聴評価だ。
事前に、普段使用しているDACであるChordのDaveと組み合わせ、MQA音源(コアデコードのみ)による顕著な音質差を確認したうえでの評価(フルデコードでのMQA再生)である。
「芳醇なサウンド」「音に芯がある」「引き締まった輝き」という肯定的な評価で、ミドルクラス機器の組み合わせで、トータル40万円という価格を考えると「素晴らしい」「黄金の組み合わせ」と絶賛している。
販売店では、熱心な評価記事を発信している「ザ・ステレオ屋」が、MQA再生に加えて通常音源での試聴も行っている。同店が目指す「ハイスピード・アグレッシブ」ではないものの、基本的要素は申し分なく、ややハイスピードよりの中速で、「バランスが良い」「ニュートラル」「少しウェット」という印象。加えて、聴き疲れしない程度の音の切れを求めるユーザーに向いているとまとめている。
他に、個人ユーザーによるブログやSNSの評価も見受けられ、上質で色付けのない音質といった傾向と解釈した。
海外の評価
ドイツのオーディオ誌「HIFI TEST」のサイトでは、2018年2月の記事でMeridian218を評価している。
まず、MQA再生でオーケストラの再現力を高く評価した後、一般音源では、「心地よいサウンド」「わずかな暖かさ」「流れるようなサウンド」と評価。周波数帯域による協調もなく、全体として、シンプルかつ非常にバランスが取れた音質とまとめている。
米国マサチューセッツ州のエレクトロニクスビジネス業界誌「CEPro」では、同社のロバート・アーチャー氏が、同メーカーのアンプ「meridian258(8チャンネルD級アンプ)」と組み合わせて評価している。
通常のCD再生では、その音質に驚かされれ、「滑らかでレベルの高い」「完全かつ詳細に聴こえる」という印象で感銘を受けたと評している。
製造本国のイギリスの評価記事で参考になるものが見つからなかったが、国内評価含め、大体に多様な評価なので、とりあえずこのくらいにしておきたい。
実際に使用して
上記で触れなかったが、輸入代理店のサイトでオーディオライターの橋爪徹氏が詳細なレビューを公開している。基本的には宣伝の場なので中立性の点から触れなかったが、独立ライターの署名記事であり参考にはなり得ると考える。
筆者は、約半年間、自宅のメインシステムに組み込んでmeridian218をさまざまなアプローチで聴き込んできた。おおむね、内外の評価と一致するが、最も近いのは橋爪誌の評価である。彼の表現では、「スタジオの生音を彷彿とさせるその表現力」という部分が最も近い印象だ。
筆者も、仕事で音楽業界にかかわった経験があり、現在もアマチュアミュージシャンなどと交流がある。
スタジオの調整室の音は、リスナー向けに聴きやすく調整されるマスタリング作業前の音なので、聴いて楽しい音ではなく商品としての製造過程の音となる。当然鮮度は高い。
meridian218も、そうしたモニター的な色付けのない高鮮度な音に感じる。一方で、電源ケーブルやLANケーブル、アンプなどの変化にもビビッドに反応する。橋爪氏は、ハイエンドの音と評しているが、さすがにそこはハイエンドの音ではなく、やはり中級機の音というのが筆者の印象である。
まとめ
買っても良いと思えるケース
・meridianの他社にない技術を擁した音を確かめたい、聴いてみたいと考えるユーザー
・MQAやROONに興味の高いユーザー
・中庸で、バランスの取れたDACを長期間使用したいと思うユーザー
・ITリテラシーが高く、LANの設定やアプリの操作が苦にならないユーザー
製品仕様
オーディオ出力:2ch アナログ端子(RCA)
オーディオ入力:アナログ入力(入力感度の調整可能)/デジタル同軸入力(44.1kHz ~192kHz/24bit)/Meridian SpeakerLink入力( 44.1kHz ~192kHz/24bit)/デジタル光入力 (44.1kHz ~96kHz/24bit)/ネットワーク入力( 44.1kHz ~96kHz/24bit)
電源・消費電力:AC100V、5W
外形・重さ:幅 204mm x高 42mm x奥行 150mm 、0.56kg
生産地:イギリス ケンブリッジ(ハンドメイド生産)
(輸入代理店公式サイトより抜粋)
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