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アナログ盤再生(アナログレコード)がCDよりも音が良いと感じる12の理由

アナログ盤(アナログレコード)プレーヤー、ターンテーブル

 1980年代にCDが誕生して、アナログレコードすなわちアナログ盤は急速に世の中から消えかかりました。一部のオーディオマニアや、大量のレコードコレクションを所蔵する好事家以外は、無条件にCDの方が優れていると信じ込み再生装置(レコードプレーヤー)を処分してしまった人も少なくありません。

 かくいう筆者もその一人。便利さと高性能を兼ね備えた文明の利器の優位さを信じての行為でした。

 ところが、初期のCDプレーヤーの性能が今一つだったこともあって、オーディオマニアの一部は、アナログ盤再生機器を手放しませんでした。絶滅危惧種と思われつつ、かろうじて一命を取り留めたという流れから、その後は一転しアナログ盤の生産や発売タイトル数が増えていくという変化が訪れました。アナログ盤の売り上げは増加していて、米国ではすでにCD(こちらは落ち目で減少傾向)を上回っているそうです。

 CDやデジタル再生が技術的に進歩して音質も向上した2010年代以降も、「アナログ盤は音が良い」という意見が盛り返しています。今回は、なぜアナログ盤の音が良いのかについてまとめました。

元々言われてきたアナログ盤に対するCDの優位性

まずはCDやその後のデジタル再生の利便性について

 まずは、大きさと重さ、そして持ち運びの容易さについて。

 LPレコードに対して圧倒的に小さく、洋服のポケット(具体的には紳士服のスーツやジャケット)に収まる大きさとしてCDは最終規格が決まりました。アナログ盤は衝撃や摩擦に弱く曲がったりキズが付くと致命的です。一方のCDはプラスティックのケースに収まり、そこまで持ち運びに気を遣う必要がありません。

 次に、ホコリ対策。アナログ盤のホコリなど汚れは、再生時にスクラッチノイズを発生するうえに、盤に傷を付けて痛んでしまう危険があるため、再生前には専用のクリーナーで掃除する必要がありました。これに対してCDは、通常の仕様であればそこまで神経質になる必要がありません。

 これ以外にも、デジタル再生という括りに幅を広げれば、メモリープレーヤーというような超小型機器で再生できたり、デジタルコピーやネットワーク再生、マルチチャンネル再生ができるという利点もあります。

 さらに、機器の面では針交換からの解放や、イコライザーアンプや昇圧トランス(MCカートリッジを使用する場合に使う機器)が不要になったというのもありました。

CDのアナログ盤に対する音質・技術上の優位性について

 CD登場時に驚きを持って示されたのが「ワウフラッターからの解放」「圧倒的なSN比の向上」「チャンネルセパレーションの高さ」「ダイナミックレンジの大きさ」「サブソニックフィルター(反ったレコードを再生する際にスピーカーを保護するフィルター)が不要になった」という事などです。

これらは、音質向上に直結しており初期の頃は、これだけでも音質的にLPを圧倒すると思われていました。

アナログ盤再生に問題意識を持ったきっかけは

 きっかけは、こちらの記事です。CD時代になってもアナログ盤再生を続けるオーディオマニアから「アナログ盤はCDがカットする20kHz以上の超高域も入っているから音が良い」という話を聞かされ続けました。ところが、こちらの記事では制作側のプロがその神話を打ち消すような趣旨の話がテーマとなっています。

 当時のキングレコードの録音部長、菊田氏がステレオサウンドの座談で語った内容です。「ステレオ・ラボラトリー」というオーディオマニア向けのアナログ盤レコードを発売する時に、25kHzまで高域を保って収録したら音質が良くなったという話です。

 裏を返せば、一般のLPなどはカッティングの際に、20kHz以上をカットするという話になります。それではCDと少なくとも超高域については同じとなります。

 人間の耳には20kHz以上は聴こえない(一般的な健康で若い人の場合で、老化に伴い上限は落ちていきます)、という理由で、CDはそれ以上を収録しない規格としました。

 その後、SACDやハイレゾの時代になって「聴こえなくても感じられるため、超高域が入った方が自然に聴こえる」という説がいわれるようになりました。

熱心なマニアが集まるSNSに疑問を投げかけたら、多くの方が反応

 CDと一般のアナログ盤が20kHz以上をカットしているとしたら、アナログ盤の優位性は謎に感じてしまいます。そこで、メンバーが9千人を超えるFacebookのオーディオ系公開グループ「オーディオマニア」でこの話題を持ち出してみました。

 そうすると思った以上に、多くの方が濃い回答を寄せてくれました。折角なので本ブログにそれらをまとめ、保存版のナレッジとして活用できるようにしたいと考えた次第です。

2020年代のオーディオマニアが指摘するアナログ盤再生の音の良さとは

理由その1、カットするといってもいきなりゼロにはならない

 Kさんから、かなり詳しい解説をいただきました。

 「カットしている」と言っても、アナログマスターの場合、いきなりゼロになるわけじゃないです。
仮に-12dB/octでカットしているなら36kHzでたった-12dBダウンするだけです。超音波領域が聴ける人ならその違いが判るはずです。」

 なるほど腑に落ちます。いきなりゼロになるCDに不自然さを感じても、なだらかな減衰なら不自然さはあまり感じなくなるというロジックだと思います。さらに低域も解説いただきました。

 「30Hz以下の話も同様です。こちらは15Hzぐらいまで聞こえる人はざらにいますから、もっとわかりやすいでしょう。」

 Tさんからも、補足的な知識を教えていただきました。

 「レコードのRIAAカーブも10Hz以上から18kHzまでしか規定がありません。」

理由その2、チャンネルセパレーションの悪さが良い方向に聴こえる

 続いて、Aさんのご意見です。

 「レコードの構造と針を使う事でクロストーク歪が混入してくるレコードですがそれが独特の音の厚みに繋がっていると聞きました。」

 少し俗説っぽい内容ですが、現実に一部の音源でLPがデジタル音源よりもかなり厚みを感じたケースを経験しています。あり得るかなと思いました。同様にFさんも似た印象を回答してくれました。

 「レコードならではの厚みのある濃くて滑らかな音に魅力を感じてレコードを楽しんでいます。」

理由その3、レコードをデジタル録音しても、アナログ盤の音になる

 こちらはSさんからのご指摘ですが、他の意見と併せて考えるとヒントになりそうです。

 「レコード(カートリッジ+フォノイコライザー)からの信号をAD変換し、その後DA変換してデジタル再生して聴いてみると面白いですよ。摩訶不思議…ちゃんとレコードの音がします。つまりアナログかデジタルかと言う話しでもなく、あくまでもレコード再生の音と言う話し・・・と言うか、1970年代後半以降のレコードは元のマスターはデジタル録音ですから…」

 デジタル録音の音源でも、アナログ盤の味が乗るという事でしょうか。こうした技術的にまマイナスと思える歪的なものが、人間の感性では「味」として良い方向に感じさせる、というのはオーディオ以外の分野にも存在します。筆者が最近嵌っているカメラのオールドレンズはまさにその典型ですね。

理由その4、ノイズを含めて味になっている

 同じく「味」だという指摘をR.Aさんからいただきました。 

「いろいろとCD/SACDでは感じないものがアナログでは感じますよね。私はアナログはカンチレバーのしなり、アームによる加音、ターンテーブルシート、駆動系このあたりがそれこそノイズを含めて味になっていると思います。」

理由その5、超高域のアナログノイズが倍音になっている

 もともとカッティングで超高域を削除しているという制作側からの意見からスタートした疑問ですが、Mさんからこれに対する回答をいただきました。

 「特性測定するとどのLPにも20kh以上の音は入っていますが、それは音楽信号では無くアナログ特有のノイズです」「倍音だと思います」

 Mさん自体は超高域の倍音感には懐疑的とのことですが、SACDが登場したころ、圧縮音源の音をよくする技術として、一時似た原理のものが登場しています。そうした経緯を考えるとあながち無視できない要素ではないかと思えたりします。

 SONYの「DSEE」、パイオニアの「レガートリンク」、ケンウッドの「D.R.I.V.E.」やTDKの「Audio Magic」がそれにあたります。

理由その6、デジタルノイズが乗っていない

 Mさんからの指摘は、まず「音楽は空気信号なのでアナログの振動を基本とするのがよし」という話からスタートします。

 「音楽は空気振動から発生したものを耳の鼓膜で受けて聴いているのが基本なので、アナログのままというのが理にかなっているかなと思います。(中略)電気を使わない蓄音機はバイオリンやヴォーカルは度肝抜く音です」

 振動を電気変換すらしないSPの機械録音、朝顔式蓄音機(結構マニアいますね)の利点を指摘した後に、デジタルノイズの話となります。

 「CDにも耳には直接聴こえないけどそうしたデジタルノイズが乗っていて、それがなんとなく違和感があるのではと思っています。DACの後(アナログになった後)の増幅に真空管使ったり、トランスを噛ませるとそれが和らぐのはそこでデジタルノイズがある程度緩和されるからかなと思っています。」

 CD初期の頃は、トランスなどを通して「デジタル臭さ」を消すという手法を使わないと聴いていられないというマニアが少なからずいましたね。

理由その7、優れた周波数特性を刻んだからかならずしもいい音に鳴るとは限らない

 こちらは、オーディオブーム時代に活躍した作家兼オーディオ評論家の五味康祐氏の評論をYさんから紹介いただきました。

 カッティングマシンの話ですが、重量な箇所を要約します。

 ソニーがノイマンの最新式のカッティングマシン(アナログ盤制作過程の重要な機材)を導入した時の話。マスターテープの音をそのままフラットに入れてカッティングして「さぞや良い音に」と思いきやがっかりの音だったという話から始まります。 

じつはそのマスター・テープをカッティングするときに、技術者は「ハイを落とさせてくれ」と言った。一万五千ヘルツ以上はカットし、低いほうも四十ヘルツ以下は、切り捨てる。そのかわり七、八千ヘルツあたりを3dBあげる、そのほうが耳あたりがよくなる、と言うのである。

http://www.audiosharing.com/

 結局は、職人芸を通した方が格段に聴感上の印象は良く、「優秀な機材を使ってさえ、音色を左右するのはマシンではなく、まだ人間の耳――音楽的教養のある耳なのである。」と結んでいる。

 CDなどデジタルの場合も、ミックスやマスタリングのエンジニアのノウハウや感性で、出来上がりは大きく左右されるという話をよく聴く。アナログ盤に良いものが多いというのは、そうした円熟した技術者が多く存在していたということかもしれません。

理由その8、帯域積40万の法則

 Hさんの指摘ながら、ご当人の解説はなく、筆者の理解で解説する内容です。

 40万の法則は、オーディオでも有名な説です。AMラジオが意外と音楽を楽しく、時に感動を持って聴けるのは、周波数特性の上下を欲張らず(AM方式の限界で必然的に)バランスよく減衰しているからだというような話です。

 アンティークオーディオなどの古い真空管アンプが、特性上は広帯域とは逆の特性でも聴感上は心地よいというのも同じ理屈です。かまぼこ特性といわれ、当時の出力トランスの性能などから、CDはおろかLPよりも狭帯域です。上下のバランスの取れた減衰が功を奏したといわれたりします。

 CDは、20-20kHzなので、ドンピシャ40万で良さそうに思えますが、アンプまではまだしもスピーカーは、余程サブウーハーなどで補わない限り、下は20Hzまで出るという事はあまりありません。バランスをとるなら、上も20kより下でないとという話になります。

 前述のRIAAカーブ規定が18kであり、アナログの高域カットは自然な減衰という内容を併せると、アナログ盤の方が、よりバランスの取れたリスニングになるという理論だと思いますs。

理由その9、初期のデジタル音源はマスタリングノウハウに難がある

 こちらは先に筆者が指摘して、Hさんに補足いただきました。レコード会社のアナログ盤時代のマスタリングエンジニアが、CDのマスタリングに馴染めなかったという内容です。

 「入れ物の特性が掛け離れているのに伝統芸能をやろうとして盛大にスベってしまうパターンですね。例えばレコードのクロストークが作る音場(左右の音が混ざって中央に寄る)に合わせてほぼ3点定位左右張り付きのパンにしてクロストークがないCDに入れた結果ステレオ初期のピンポン録音みたいになってしまう、とか、レコード盤のEQに依存したテクが抜けずにレベル小さいのにコンプ掛け過ぎてヌケ感が無いとか、そういうデジタルではやらなくてもいい余計なことをそれまでの仕事の延長でやってしまった結果、ろくでもないモノができてしまう、というパターンです。」

 アナログ盤で評価の高い音源がCDでがっかりしたという事は。数多くあります。

理由その10、初期のCDはジッターが酷かった

 9と似たような話で、こちらは技術面です。現在では、デジタル再生の肝の一つはジッターであるというのはマニアでは常識になっています。ここはFacebook以前の一般論の内容になります。

 しかし、CDの初期はそのノウハウが低く、CD制作に使うクロックの品質など悪く、必然的にCD自体にジッターが多く乗って音質上の苦情も多かったそうです。

 CD規格生みの親のソニーが、かなりこの対策に研究開発したというのは有名な話です。

 歴史的銘盤は、CD初期にデジタル化して発売されましたから、劣悪なものが少なくなく、ビートルズなどは何度もリマスタリングされていたりします。そこまで売れ行きが期待できる有名でない作品はリマスタリングの機会も少なく、アナログ盤はそれなりでもCDは劣悪なままだったりしますね。

理由その11、音になる未満の短い音波の処理

 こちらもFacebookではなく、筆者の知る内容を基にした仮説レベルの話です。

 以前、元NHKの音響技術者から聞いた話です。人間が音として認識するには、一定以上の音波の長さが必要です。しかし、自然界や録音現場には音として感知できない短い音波が存在するそうです。

 アナログテープやアナログ盤は、そうした短い音波は自然に訛って減衰して気にならないそうです。しかし、デジタルは正直でそれをも収録してしまうそうです。そういうものの処理(どうするかは知見ありません)がないと、放送でも音質上の苦情が来たそうです。

理由その12、ダイナミックレンジに関しての詳細

 Wさんから、ダイナミックレンジに関してその知見をご披露いただきました。CDはアナログ盤よりもダイナミックレンジが大きいということになっていますが(優位性)、詳しくは付随して以下のようなことがあるそうです。

 「アナログレコードのダイナミックレンジはサーフェスノイズと最大信号レベルとの比だけで語られることが多いですが、実際には、サーフェスノイズ以下の信号も聴き取ることが可能です(ノイズのレベルの方が高くても情報を拾い出せる)。
 また、録音と再生とにイコライザーが使われているので、高域の実質ダイナミックレンジは思っているより大きなものになります。
 加えて信号のレベルが低くなればなるほど歪が減少してくるのも特徴の一つです。
 デジタルでは、量子化ノイズ以下の信号はゼロであり、高域ではレベルが低くなればなるほど歪が激増してきます。このため、オーケストラの中でソロを演奏するバイオリンなどの高域倍音については、デジタルよりもアナログが有利で、LPで聴くとバイオリンソロがクッキリと浮かび上がりやすいと感じています。」

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