当ブログおよび運営しているYouTubeチャンネルの造語である「オーディオ原理主義者」は、2種類に分類されます。オーディオ原理主義者とデジタルオーディオ原理主義者です。広義のオーディオ原理主義は、デジタルオーディオ原理主義も含むのですが、分類・区別した方がわかりやすいので、狭義のオーディオ原理主義はデジタルオーディオ原理主義を除くと定義(造語なのでとりあえず話を進めるため)します。
日本人にありがちな「科学的・論理的」と本人が思い込んでいるアプローチが実は非科学的だという説は、このオーディオ原理主義主義者の生態と併せて以前の記事でまとめました。
今回は、デジタルオーディオ原理主義者の具体的な意見を、当チャンネルが運営するコメント欄に寄せられたものから抜粋して引用・紹介(コメント全体は投稿者に著作権があるらしいので)します。
これらは、2015年にTVでひろゆき(西村博之)氏が発した有名な煽り文句「それってあなたの感想ですよね」が相応しい例だと思います。このデジタルオーディオ原理主義者たちのコメントは、エビデンスがなく憶測もしくは経験に欠ける思考のみによる、結果感情論なのですが、本人たちは事実と思い込んでいる残念な構図です。
ただし、だいぶん以前(2000年代)ですが、筆者もデジタルオーディオ原理主義者だった時期があります。SNSで上級者に噛みついてご迷惑をかけたことがあり、自虐も兼ねての投稿です。

運営しているYouTubeチャンネルは、こちらです。
オーディオマニアは世にいう変人なので、(デジタルオーディオ原理主義ではない)単なるオーディオ原理主義者は、実は常識人?
「オーディオマニア」は差別用語?
オーディオマニアという言い方、括り方は「マニア=変質狂=極端=変人≒非常識」というニュアンスを含むので、海外ではあまり使われません。日本でも一時「オーディオファイル」などと言い換える動きがありました。しかしオーディオマニアの多くは、音響の世界およびそれを趣味とする人たちの志向が一般常識とは食い違うことが多いことを大抵は自覚していますね。
当ブログも、それを大いに自覚しているため積極的に蔑視が含まれる「オーディオマニア」という表現を使っています。
「常識のウソ」は多くのジャンルで存在する
「常識のウソ」という表現があるように、いろいろなジャンルで物事を専門的に追及すると、一般人に多く信じられている概念と違いが生じる、ことが珍しくありません。
モノを知らない一般人はこう思いがちだが、専門的に追及したマニアはこう考えるということで、マニア本人は、内心優越感に浸ったりするわけです。というわけで、(デジタル原理主義を除く)多くの「オーディオ原理主義者」は害が少ないのではないでしょうか。ネット上や直接的において、マニアやオーディオメーカー・オーディオ関係者に向かって暴言、暴論を吐くような行動以外は、世間でも「今更」で概ね流される程度で終始すると思います。
※オーディオイベントで、アクセサリーメーカーの講演を妨害する行為を1度だけ見かけたことがあります。
「オーディオの常識は世間の非常識」は枚挙にいとまがない
自分自身最初に「あり得ない!」と感じて驚いたのは「ケーブルによる音の違い」です。義務教育や高校、大学の教養課程などで教わる科学の知識では、実は基礎的なことしか教えていません。
電気の伝わり方は、せいぜい金銀銅のような金属の種類で電気伝導率が違うくらいまでしか教えません。金属の純度や結晶構造による違いや、端子などで異種金属が接触する場合の歪みなどは科学的には基礎的な知識ですが、大学などの専門課程でないと扱わない内容だと思います。
したがって、RCAケーブルで音が変わるとか電源ケーブルで変わるといわれても信じられなかったし、ましてや機器付属などの汎用ケーブルからオーディオグレードの高価なものに変えると音質が向上するなど、オカルトとしか受け止められませんでした。
マニアの沼にハマって、少し違いが分かるようになると、実際にやってみた場合の違いは想像をはるかに上回ったりしますが、普通に生活していると想像すらできませんね。
こうした例は枚挙にいとまがないです。さらに、マイ電柱など極端な対策は、同じマニア同士でもピンと来なかったりします。
デジタルオーディオ原理主義者が落とし穴にハマる大本質
世界の戦争・紛争・テロの原因の多くを占める「イスラム原理主義」の本質は、イスラム教のコーランの教えの極端な解釈といわれています。
それと同様に「デジタルオーディオ原理主義」の本質は、「デジタルはゼロとイチなので、データに変化がないことからして、音に変化はない」という落とし穴にハマることだと思います。
当初はだれしもそう考えるものの、実経験を積むと、それはどうやら浅はかな考えだったと気付くのが不通だと考えています。
全てに「エラー訂正」を行うわけではない
現実には、音楽信号のようなデータの伝送は、リアルタイム伝送となることが多いです。電話での会話や、オンライン会議、ライブ放送、楽器演奏などでは、ユーザーに違和感を与えるレベルでのタイミングの遅れは許されません。そこで、通常のドキュメントやインターネットのサイトの情報をおくるような「データのチェックや訂正」をのんびりやる暇がなく「リアルタイム伝送」という転送方法が使われます。このリアルタイム伝送では、ゼロとイチが不明確な場合も「エラー訂正は行わない」「一部のみエラー訂正を行う」「エラー訂正ではなく前後のデータから類推する”エラー補完”のみ行う」というような方法でデータ処理されます。これを知らない、もしくは誤解していることが多いのが一因だと思います。
PCを使い始めたり、コンピューターの概念を最初に学ぶ頃に人々が取り組むのは、「プログラミングの原理」「OSの基本操作」「エクセルやワード(ドキュメント)」「ウェブ閲覧」だと思います。そこで説明されるのは「ゼロとイチ」「エラー訂正」のセットで、文字化けのような物理的不具合がなければ「正確性」は損なわれないということです。
エクセルやワードのようなドキュメントファイルや、金融機関を含む正確性が根本原則のデータ通信では、「文字化け」などは論外なエラーとなります。エラーがなく、機器が正常動作している限り、ファイルやデータは不変と習います。実際その通りなのですが、電話とかライブ放送などの「エラー訂正」が不完全な「リアルタイム伝送」は、普段はあまり話題になりません。デジタル系の技術者(デジタルオーディオ原理主義者多いです)でも、専門が違うと知らないか見落としている方が少なくないようです。
考えてみれば、電波が悪い場所でスマホなどの携帯電話でのやり取りをする場合、「エラー訂正」を繰り返して「音が遅れる」ということがあるでしょうか?音は遅れず、送れなかったデータは無音になります。つまり一部の音が途切れるわけです。似たような現象で、雷や雪雲で衛星放送の音と映像が途切れ途切れになることもありますね。この手の経験は誰もがあるはずなのに、その原理が話題になることはほとんどありません。
CD再生やUSBオーディオも、S/PDIF(同軸デジタルケーブルまたはオプティカルの光ケーブル)でも、音声信号は一方通行でリアルタイム伝送であるため、エラー訂正はほとんどありません。CDプレーヤー内部で「エラー補完」(「エラー訂正」と混同しやすいので要注意です)は機能として備わっています。またPCオーディオにおいて、PCの内部処理・内部伝送で「エラー訂正」は行われます。
重要なのは、エクセルのデータや金融機関のデータやり取りのような正確性は、デジタルオーディオでは技術的に備わっていない(規定、設定されていない=プログラミングされていない)ケースが多いということです。
この段階で、デジタルオーディオ原理主義者の「エラー訂正があるからデータは変わらないし、音に変化はあり得ない」は成立しない訳です。
とはいえHiFiオーディオ機器では、データはほぼ変わらない
矛盾するようですが、データの完全一致が担保されていないUSBのPCオーディオ(USB2.0以降)や、同軸デジタルケーブルでの伝送(S/PDIF)でも、データは大部分一致します。元のCDが傷だらけとか、正常動作していないとかいう特殊なケースを除いて「リアルタイム伝送」でも、HiFi再生のクオリティで再生する機器は結果的に完全またはそれに近いデータがやり取りされています。これを「ビットパーフェクト」といいます。
デジタルHiFi再生はビットパーフェクトが前提となる
HiFi再生レベルで、メーカーやマニア、オーディオ関係者がデジタルオーディオ再生の検討や議論をする場合、問題を切り分けるために「ビットパーフェクト」を前提とするのが一般的だと思います。
そして、「ビットパーフェクト」なら音もいつも完全で変化も機器の差もないのか?実際に試してみると「デジタル原理主義者」の考えとは逆に、音は違いまくります。並みの判定力があればそれが体験として容易に得られるのが現実だと考えています。ここがスタートラインとなるのが、デジタルオーディオ原理主義者との決定的な違いだと思います。
つまり、「約束はされていないが結果的にほぼ完全なデータが扱われるにもかかわらず、再生音質は大きく変化する」という前提で情報を整理したり試行錯誤していかないと、そもそも本質を誤るという話でありました。
これが(ややこしい理論ですが)、落とし穴になりがちな一つの要因だと考えています。
エラー訂正が行われるネットワークオーディオはデータは正確だが
後から一般化してきたネットワークオーディオは、上で紹介した「エラー訂正」がないことによる音声データの変化がありません。一部の通信プロトコルは例外となりますが、それらも実用上の障害(データ変質や跡切れ)になることはかなり少なくほぼビットパーフェクトが達成できる方法と考えてもいいようです。
当初(ネットワークオーディオ黎明期)は、マニアもメーカーもこれで完全なオーディオ再生が期待できると考えました。ところが、実際にはそうではありませんでした。場合によっては真逆といわれるほど、音の機材や環境による変化が多いことが経験的に分かってしまいました。
ここでも「データは完全でも、再生音質は大きく変化する」という同じ結論が待っていた訳です。
本質を科学的に追及するためには、データの変化意外に目を向ける必要が生じます。この段階で「データが変わらないから音は変わらない」という前提は捨てて考えたり実践しないと、本質は外したままになると考えています。
本質を外すのは、科学的には見落としであり、そういう見落とし含めて仮説と結果が不一致な場合の原因を再検討するのが本来の科学なのですが、「デジタルオーディオ原理主義者」は「感想が科学と勘違い」したまま他者に攻撃をしかけるようです。
デジタルの音質変化の原因といわれる3つの要因
デジタル再生時のオーディオシステムの音質が変化する要因として、現在のマニアやメーカー、オーディオ関係者、学者などは大きく3点指摘しています。
ただし、それらは技術としても科学としても充分解明されたものではありません。もちろん特定のメーカーなどだけが知っている技術やノウハウというのもあると思います。
さらに、これまでの常識が次々裏切られてきた経緯から、「それ以外にもあるかもしれない」と多くのマニアやメーカー、関係者は柔軟に考えているようです。
一つ目は原理主義者も肯定するDAC(デジタル変換機器)の回路や品質の違い
省略すると語弊が生じかねないので、この当たり前の要因も入れておきます。DAコンバーターは、正確で同一なデータを送り込んだとしても、アップサンプリングやデジタルフィルター、DSP回路など機器固有のデータ処理やそもそも変換方法が本質的にいくつかの違う方式が存在するため、回路の違いが音質に影響します。
さらに、デジタル変換以降のアナログ回路は、アナログ機器なのでアンプなどと同様に機器や回路で音質は異なります。
さすがにこの辺りは、よほどの初心者でない限りデジタルオーディオ原理主義者でも異論はあまり聞きません。
二つ目はジッター(時間軸の狂い)
デジタルオーディオでなぜ音が変わるか?多くのマニアが、オーディオ誌やオーディオ評論家の開設などで学ぶのがこのジッターによる音の変化だと思います。
オーディオ信号のデータは同じでも、最終的にデジタル変換されるまでの伝送回路や最後のDAC機器内部においてもこのジッターが増減するようです。人間の耳は物凄く敏感で、エクセルのファイルや金融機関とのデータ通信に影響がなくても、音のタイミングのごくわずかな狂いで音質が違って聞こえます。オーディオ機器のカタログ発表やオーディオ誌、オーディオサイトの計測で、このジッターの計測値の公表などもかなり行われるようになりました。
しかし、ジッターにもいろいろな種類があり、それらが軽減されたり増えたりするメカニズムは複雑で解明つくされているわけでもありません。
コンピューターや周辺機器に使用される時間軸の基準は、安い水晶発振子なので、オーディオでそのまま使うと誰でもわかるくらい音が劣化します。CDの黎明期では、レコード会社もこれを知らず音の悪いCDを発売して苦情が殺到していたそうです。
その後は、レコード会社もオーディオメーカーも、オーディオ機器には品質の高い発振子や発振器を使うようになり、オーディオマニアは、外部クロックという結構な価格のクロック装置(発振器の機器)を使うのも珍しくない状況になっています。
昨今のマニアは、クロック装置だけで数十万から三桁の製品を導入するのが珍しくなくなっています。
一方で、自作マニアはこちらのような数千円の実験用クロック装置で試してみるというパワーんもあるようですが、これでも充分音は変化するそうです。
PCオーディオやネットワークオーディオ、そしてDAコンバーターには、ジッター対策として、これを軽減する回路を搭載していることが多くあります。代表的なのはメモリーバッファという手法で、RAMなどのメモリに一旦オーディオデータを入れて、ゼロイチの記号に戻して読みだせばそれまでのジッターをリセットできるという理屈です。しかしながら、何故かは詳細にはわかりませんが(解明されていないのか筆者が不勉強なのか?)これで万全という事は現実にはないようです。
そもそも、音質変化に影響の大きいジッターとそうでないジッターがあるとか、オーディオ的に性能の良いクロック装置はどのようなものかなど、これだけでも奥の深い世界となっているようです。
最近では、DAコンバーターからは遥か上流の、スイッチングハブのクロックを向上させると、かなり大きな音質改善があったなど、やってみないと分からない話も多い状況です。なので、憶測や想像・思考だけで判断したりモノを言うのは、この分野において大変軽率な行為と言わざるを得ないと思います。
三つ目は伝送ノイズ(主にデジタル機器内部や伝送上のノーマルモード・コモンモードノイズ)
PCオーディオやネットワークオーディオでは、当初は普通のPCおよび周辺機器が活用されることが一般的でした。しかし、そうした機器は必要に応じて「エラー訂正」などをかけているので、少々の電磁ノイズには影響を受けません。
信号の判別ができて、エラー訂正のアシストで実用上データの送受信ができて、他の機器に悪影響を与えないという定義でメーカーが製品を設計します。さらに、技適(無線通信の場合電波法で基準適合した製品のみ販売可能)などの公的検査をパスするレベルが製品の基準となっています。つまり、誰も音質のことなど配慮していません。
デジタル再生では、非オーディオのデジタル機器は、オーディオのレベルで見るとかなり盛大にノイズの混じった信号をやりとりしているようです。
こうしたハードウエアに由来するものだけではなく、ソフトウエアや通信プロトコルもノイズの発生要素となり、ノイズがアナログ回路に伝わったり、新たな有害なジッターの源になるようです。
最近のマニアは、ネットワークオーディオで、光LANケーブルの光変換を使用してノイズカットを目的としたアイソレーションというのがノウハウとして広がりつつあったりします。原理主義者からすると、「ゼロイチが光変換で変わるわけない」と試しもせずに否定することでしょう。
デジタルオーディオに関して解説動画も公開しています
具体的な「オーディオ原理主義者」のコメント紹介は<後編>にまとめます
ここまで、一通り、なぜデジタルオーディオ原理主義者が「それって感想」な意見ばかり断定的に主張して、経験値が低いマニアから見ると残念な人たちに見えるのかを説明してきました。
具体的な引用の前に、結構な分量になってしまったので、これ以降は後半に投稿記事を改めます。
後編はこちらです。
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