(本記事は、「自作真空管アンプのホームページby百十番」から移転しました)
仮想アースとは
そもそもアースというのは、結構表現するのが難しいというか、正確な表現や厳密な定義は高度な話になるので、ここでは一般的なオーディオユーザーが承知しておくべき範囲で説明します。ある専門家からは「電気を逃がす」と教わったことがあります。代表的なものが地中アースというもので、洗濯機などが万一の感電防止に接続する洗面所にある端子がそれです。
この端子は、地面に埋め込まれた導体金属のアース棒に繋がっています。同じように、電柱の電力線も通常3本の内1本が地面に繋げられています。アースが日本語で書くと「接地」または「接地線」ですので、この方がイメージがわきますね。
大地は限りなく電位が低く、それを利用したのが地中アースとなります。詳しくは、さらに専門的なサイトでお調べすることをお勧めします。
電柱や電力や洗濯機というアースに関する機能がある一方で、オーディオ機器にもアースが存在します。オーディオ機器のアースは自作アンプの配線では重要な意味を持つのですが、百十番は、長年、この両者のアースがイコールだと認識していました。オーディオ機器のアースは、オーディオ機器同士をアースで繋いで(RCAなど信号を伝えるケーブルにアース線がありますので、普通は自動的に繋がります)最後に地中アースに繋がると良いというのが一般論と信じて来ました。もちろんそれはかなり良い手法であることには変わりありません。しかし、実際にはオーディオ専用の地中アース線を設置する必要があります。洗濯機などとは別にしないとそれらのノイズが混入してきたり、アース棒他なりしっかり埋め込まないと、大地の低いはずの電位が充分に低くならないそうです。
また、オーディオ機器を地中アースに繋がなくとも、機器は普通に動作しますので、意識しない人が大部分だと思います。
仮想アースとは、こうした良質の地中アースに繋ぐのが困難な場合の代替手段として考え出された手法ではないかと思います(最近では仮想アースをさらに地中アースに接続する例も出てきています)。オーディオ機器に絞ってアースの意味を考えると、機器の電位差を減らす機能が大きな意味を持ちます。
電子回路は、アースの電位が0Vと計算上規定して、たとえば12Vだと、機器内のアース電位に対して+12Vというのがその位置付けとなります。回路図では、アースを0Vとしますが、実際に計測器で機器を計測すると0Vにはなりません。0.数Vとか一桁台の数値となったりします。さらに、その電位は変動する(揺れる)ことが多いです。
信号線で繋がれている機器同士も、繋がれているから完全に同電位かというと機器内で発生する電圧の揺らぎなども加わって電位差が生じていたりします。また、アースループと言って、複数の機器が繋がるうちにループ状になる場合もあり、そうなるとラジオノイズとか別のノイズを拾うアンテナの役割をしたりして良くありません。
アースが安定すると
ハイエンド機の回路は、アースに関しても揺らいだりノイズを拾ったりすることが少なくなるように、かなり対策されて作られています。アース電位という基準が揺らぐと、音も電気なのでそれに伴って揺らぎが生じて音質を損ないます。高度な機器はそれを少なくする対策が多く入っているのですが、複数の機器を繋ぐため、最終的にはシステム全体が、アースの揺らぎによる音の揺らぎを小さくする必要があります。
電源対策も、現代のオーディオでは重要視されますが、電力線に乗ってくるノイズをアースに上手に逃がすことも、音質向上には有効な対策だとされており、いずれにしても、オーディオ機器のアースの安定は、音質に直結するわけです。
ここで紹介する仮想アースは
仮想アース機器は、2010年代くらいからあちこちのオーディオメーカーから商品化されるようになりました。製品もピンキリで3桁万円の機器なども売られています。実際にはキリというのもあまりなくて、安くてもオーディオショップで購入する製品ではそれなりの金額がします。
このサイトは、自作がサイトタイトルとなっているように、自作を意識したノウハウを紹介するサイトなのですが、この仮想アースも自作派が存在します。備長炭とかトルマリンとかを瓶に詰めて、ミニ大地を作る方法です。比較的安価に作れたり、ヤフオクで専門に安く売っている方もいらっしゃるので、結構リーズナブルです。
しかし、2019年に、オーディオマニアのSNSであるファイルウェブコミュニティで、従来の自作よりはるかに簡単低コストで高価も高い方法が提唱され情報交換されました。
噂の金属たわしアース
そのSNSで提唱されたのは、「金属たわしアース」です。百均やホームセンター、金物店で安く入手できる、台所清掃用の金属たわしをその主現材料とします。同じく百均などで売られているガラス瓶やマグカップ、プラスチックケースに金属たわしやアルミホイルに加えてアース線を入れて完成です。実に簡単かつ安価です。
写真の、百十番の事例では、百均のプラケースにたわしとアルミホイールを入れて、ホームセンターで買った小さな銅板にアース線を繋いでそれに一緒にいたものです。ファイルウェブコミュニティで報告を読んでいるときは半信半疑でしたが、とにかく安く試すことができるので、「作ってみたら効果的だった!」というわけです。1000円でお釣りが来ます。
ネット購入なら、定番のステンレス以外にもいろいろ(比較的安く)入手できます。
注意事項
その後も、SNSで多くの方がこの方法に取り組んだようですが、実際には、この作り方で大きく音質が変化するそうです。また、軽い材料なので、物理的にも重力の影響が大きいのか、作り立てでは音が安定しません。ある程度設置してから経過を見る(聴く?)必要が生じます。
たわしの原料も、ステンレスや真鍮、銅など製品によっても金属が違いますので、それによって、あるいはその配合で音が違うようです。
強く詰め込むのか緩くするのか、少量か多めかや、ケースをどうするかなどで大きく変化します。
実際にやられる場合は、試行錯誤するか、ファイルウェブコミュニティで先人の試みを調べた方が良いと思います。中には製品化した方もいらっしゃるとかです。
なお、繋ぐ位置(システム上の)についても、大きく効果が変わります。システムの中心であるプリアンプに繋ぐというのが一般的だとは思います。
まとめ
仮想アースの効果は大きく、製品によって音もかなり変化します。自作も可能で、金属たわしアースというのを実際に導入したら、確かに効果的だったという話です。これが、このところの私的音質向上効果策の第二位です。
<2020年オーディオ的に効果の有った音質向上策 -5選->
・まずは第一位のDAC>>
・ 第二位は、ウルトラハイコスパの仮想アース(この記事)
・ 第三位は、中村製作所 ノイズ吸収リングコア アモルメット・コア>>
・ 第四位は、サンシャイン電源ケーブル(SAC REFERENCE1.8)>>
・ 第五位は、Roon Server>>
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