ベストセラーHPアンプ/USBDAC 「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」の調査

2016年12月発売の、ヘッドフォンアンプ・USBDACです

iFi Audio Micro iDSD

(写真は、筆者所有の前作)

2014年に発売された前身の「iFi Audio Micro iDSD」のマイナーチェンジ版であるため、両機併せてかなりのユーザーが購入したベストセラー製品といえる。

「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」の主な特徴として、バッテリー駆動で据え置き機としてもモバイル機器としても使用可能であること。同時に、ヘッドフォンアンプとしても据え置きの純粋DACとしても、DAC+プリアンプとしても使える使い勝手の良さを併せ持つ。

技術、音質面では、iFiオーディオが、イギリスで実績のあるハイエンドオーディオメーカー「AMR(Abbingdon Music Research)」のサブブランドで、ハイエンド機器の開発ノウハウをブレイクダウンして中低価格帯でのユニークで高音質な機器を発売しているのが注目すべき特徴だ。

具体的にはどんな製品なのか

本記事執筆時(2020年8月)の「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」の実勢価格は、アマゾンの税込み最安価格で74,520円(送料込み)。2014年にその前身機器が発売されたときには、10万円未満の据え置き対応DACで、当時の最高スペックでのDSDとPCMの再生ができるということで大いに注目された。

ハイレゾファイルが、様々な規格でダウンロード販売され、今後の主流となる規格が見通せない時期に考えられるあらゆるファイルがネイティブ再生(無変換での再生)できるとあって、長く使用できる製品とマニア心理をくすぶり話題となり大いに売れた。

Black Labelとして、パーツの見直しなどでさらなる高音質化が達成された時点で、旧型機と共通するファームウエアのバージョンアップにより、最新ハイレゾ規格のMQAにまで対応(フルデコードではなく、別にコアデコーダーを必要とするレンダラー)することとなり、万能機器としてその特徴を強めている。

この背景とする技術力は、マニア心理をなおまた燻るもので、「高精度クロック搭載」「バッテリー駆動」「USBインターフェースの内製による高音質対応プログラミング」「あえて他社が使用しないバーブラウンの旧型チップの採用」「特注品オペアンプ」などに加えて、アクセサリーで「レーダー技術を応用した電源クリーニング」「クロッククリーニング」なども有している。

機能面や詳細仕様は、かなり内容が豊富であるため、公式サイトや公式ブログで確認してほしい。

国内の評価では

評価は、据え置き機としてスピーカーを駆動した場合のモノを中心にその内容を調査した。

アマゾンの「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」の評価は、84件で4.3/5とまずまずの高評価。発売時のみならず最近購入したユーザーの評価も含まれており、その点でも参考になる。

比較的最近購入したユーザーの評価を見ても、古さを指摘する意見は見られず、これからの購入機器候補としても問題ないように感じられる。概ね、上位価格帯に匹敵する「ハイコストパフォーマンスなトータルでの高音質」「バランスの良さ」「艶のある音色」といった意見だ。また、かなり共通した傾向としてMQAの効果が明確に感じられるというのも注目に値した。

オーディオ誌では、発売時期の評価で各誌高評価を出している。「季刊オーディオアクセサリー」などを発行する音元出版のサイト・ファイルウェブでは、音楽評論家・プロデューサー・エンジニアの高橋健太郎氏の長文レビューが掲載されている。

同氏は前身機器を愛用してきたうえでの評価で、「中域が滑らかで音楽的」「前身機器よりも芯のあるくっきりした音」「透明度も増している」という趣旨の評価をしている。さらに、ステレオ感の広がりも感じられ、前身機器ではやや物足りなかった低域の力強さも改善しているとのこと。

その他、発売から月日が経過したベストセラー機だけに、ショップやユーザーのブログでも高評価が目立つ。

海外の評価

海外では、2つのオーディオレビューサイトで詳細な評価記事が掲載されていた。

ベルリン在住のJohn Darko氏が運営する「Darko.Audio」は、スポンサード記事を排除する方針を強調した客観性に期待できるサイトだ。発売時期のものだが、長文で全編と後編の二つの記事で評価している。

「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」を特に、ライバル機となる「Chord Mojo」との比較で、「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」を「力強い音」で、ライバル機のMojoを高解像度で繊細な音と表現している。

一方で、ポルトガルの「highfidelity.pl」では、発売後1年4か月を経過した時点で評価記事を掲載している。

まずは、「アナログ盤を聴いているような音色」で、組み込んだシステムの機器のそれぞれの実力を損なうことなく向上させているという評価。ハイレゾファイルの再生も、それらへの期待を裏切ることのない「密度を高める音質へと変化」「明るい傾向ではなく、密度と純度を実現」「中低域と高域が迫力があるので音が細く見えない」「はるかに高価なDACと比較しても遜色のない音」という評価をしている。

筆者の評価

筆者は、前進機の「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」を長期間使用したことがある。その延長線上にある「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」については、実機を視聴した経験はない。そのため、あくまで参考意見だが、「iFi Audio Micro iDSD 」を使用して感じた不満点をある程度改善したものとして推測している。

「iFi Audio Micro iDSD Black Label 」は、技術的にも音質的にも不満を感じないバランスの取れたDACであった。一方で、不満はないが、驚きもないレベルだと常々感じていた。そのため、アナログ盤再生のカートリッジ交換のように、他の3台のDACと時に接続を変えて使用していた次第だ。

バージョンアップによって、MQA再生が実現できたときには、その顕著な効果を感じた。これは、今回調査したほかのレビューと共通している。

「Black Label 」によって、大きく音質が向上したとしても、本質的に前進機で感じていたチップの古さに由来する物足りなさは、ぬぐい切れないのではないかと考えている。

リーズナブルで、ハイコストパフォーマンスかつバランスの取れた高規格DACとして本機を購入するのは悪くない選択だとは思う。一方で、ESSやAKMさらには新規参入のロームなど最新型のDACチップに目移りしがちのDACマニアの場合は、他の選択肢を考慮すべきではないかと思う。

本機は、上位機器と下位機器に優秀な製品が発売されている。この技術で音質を追求するならifiハイエンドの「iFi Audio Pro iDSD」(482,844円、税・送料込み、アマゾン最安価格)が望ましく、逆にコストパフォーマンス優先なら、下位機種ながら機能を絞った「iFI-Audio ZEN-DAC」(19,800円、税・送料込み、アマゾン最安価格)がもはや破壊的な低価格だ。

もう一点、長期使用には仕様上の課題を感じる。バッテリー駆動を据え置き機として使う場合、筆者はしばしばバッテリー切れに見舞われ不自由さを感じた。オーディオイベントで同様のトラブルも目撃している。さらに、バッテリーには寿命があると思われ、10年20年と使い続ける(日進月歩のできたる機器をそこまで長期使用するかどうかは別として)には不安を感じる。

まとめ

買っても良いと思われるケース

・予算的にマッチし、最新DACチップにはこだわりのないユーザー

・DACに音質上の特徴は求めず、スピーカーやアンプに音質上の特徴を求めるユーザー

・モニターとして、さまざまなファイルのチェックをしたいユーザー

・ネットワークオーディオ機能は、ラズパイやRoonBridgeなど、別に外部に設けることが現実的なユーザー

上記に当てはならない場合は、ライバル機もしくはより新しい機器の検討を奨める。

製品仕様

●対応フォーマット: DSD512/256/128/64, Octa/Quad/Double/Single-Speed DSD(Native) DXD(768/705.6/384/352.8kHz) Double/Single-Speed DXD PCM(768/705.6/384/352.8/192/176.4/ 96/88.2/48/44.1kHz)
●デジタルフィルター( DSD) Extreme/Extended/Standard Bandwidth( PCM) Bit-Perfect/Minimum-Phase/Standard
●デジタル入力: USB 2.0 (32bit/768kHz)/SPDIF 同軸,TOSLINK
●デジタル出力: SPDIF同軸
●アナログ入力: 3.5mmミニプラグ
●ヘッドフォン出力: 6.3mm標準プラグ
●RCAラインアウト(2V “xed/2V-5V variable)
●パワーアウトプット切替: Turbo (8.0V max/4,000 mW@16 Ohm)/Normal (4.0V/1,000 mW@16 Ohm)/Eco (2.0V/250mW@16 Ohm)
●内蔵バッテリー:リチウムポリマー 4800mAh ●デバイス充電システム: USB BCP V1.2 compliant up to 1500mA charging current
●出力 (最大): 2W idle, 4W max
●サイズ: 177(l) x 67(w) x 28(h) mm
●重さ: 310g (0.68 lbs)

公式サイトより抜粋

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