WiiM Proとは、どんな製品か?
AmazonミュージックHDを、ハイレゾで聴くノウハウを動画で紹介
ハイレゾをオーディオシステムで高音質再生するのに、他の方法と違って、一種独特なノウハウを必要とするのが、AmazonMusicHDだ。以下に詳しく説明するが、動画ではamazonスティックで当座のしのぎ的に再生するという方法も紹介した。
閉鎖的なAmazon
最近では、手持ちのCDはリッピングして音楽ファイルから再生したり、サブスクのハイレゾストリーミングから再生するのがかなり一般化した。ハイレゾストリーミングもTIDAL、Qobuz、Apple MusicそしてAmazonMusicHDと複数の中から選択できるようになった。これ以外に、ハイレゾではないがロスレスというCDクオリティのサービスを使っているマニアも少なくないだろう。
そうした数あるサブスク・ストリーミングサービスの中でも、技術的にAmazonだけは異色の(というか謎の)立ち位置を取っている。通常なら、サービス普及のために信号の受け手となるPC・スマホなどのデバイスや、ネットワークプレーヤー・ストリーマーなどのメーカー(及びソフトウエア開発者)に積極的に接続情報を提供するのだが、Amazonだけはそれをしない。Amazon自体はしているつもりという話もあるが、実態はメーカーが問い合わせてもなしのつぶてらしい。半年や1年後に返答があったという話も聞くほどだ。
ストリーマーやネットワークプレーヤーでAmazonMusicHDに対応していうのは(執筆時、2023年9月現在)
あくまでもオーディオ製品としての対応だと、筆者の知る限りHEOS(デノン・マランツグループのネットワーク再生機能)、Bluesound、Silent Angel、ARCAM、MusicCast(ヤマハのネットワーク再生機能)と数ある製品群の4系統しかない。
ラズパイオーディオや、筆者が導入しているLinuxオーディオも対応したという話は知らない。USBDACを活用したPCオーディオでも、2013年以降のMacは対応しているが、Windowsは未対応だ。Windowsは、専用アプリで「排他モード」というのがリリースされているが、これはHiFi再生的には不十分なものである。
リリースが伸びた日本のモジュール供給会社、インターフェース(株)のTaktina
オーディオメーカーは、ネットワーク再生やUSB再生などのデジタル系のモジュールやソフトウエアは、内製せず外注する企業が多い。HiFi再生の研究者は多くても、社内にデジタル系の技術者を抱えているケースが少ないためだ。
そうしたモジュール(ハード)とソフトウエア開発で実績のあるインターフェース(株)が、上記のAmazonMusicHDへの対応に風穴を開けるために努力し、ようやくAmazonの固い門戸を開けることに成功したというネットニュースが昨年報道された。製品名は、「Taktina」だ。
本来なら、本記事執筆の2023年の前半には製品リリースされる予定だったが、遅れに遅れ、8月1日にはAmazonMusicHDのみ外して、他のサービスのみに対応した製品をリリースした。
ここに風穴を開けていたのが米国のWiiM製品
今回紹介するWiiM Proの発売前に、WiiM Miniという製品が発売されユーザーの評価も上々だった。
執筆時のAmazonのユーザー評価数は2,302件とかなり多く、その内の78%が星5個をつけている。この手の商品では、かなりの高評価(質も量も)と思える。
販売元の位置付けは、価格帯からしてもPC周辺機器としてではないかと思える。しかし、上記に説明したように、オーディオマニア以外からは高価と感じる二桁万円台でも対応機種が少ないAmazonMusicHDの再生対応機器となれば、初中級オーディオやサブシステム構築用にオーディオマニアも含めて需要はかなりあったようだ。
WiiMの製品は、アプリの操作性・安定性も高評価
ネットワーク再生の場合、リモコン代わりにスマホを用いることが一般的なので、そのアプリの操作性と安定性はとても重要だ。デノン、マランツグループのHEOSは、AmazonMusicHDへの対応がとても早かった一方で、この部分が相変わらず不評だ。
設定も同様で、HEOSの付表に対して、WiiM製品はこれも良好のようだ。
先行機種のWiiM Miniの弱点を強化したのがWiiM Pro
評判の良いWiiM Miniのソフトウエアはそのままに、オーディオマニアからは物足りなかった弱点を補ったのがWiiM Proだといえよう。これまでWiFi接続のみだったのを有線LAN接続できるようにした。そして、デジタル出力がTOSLINK(光デジタル)のみだったのを、オーディオマニア標準の同軸デジタル出力対応となった。
なお、当サイトはオーディオマニア向けサイトなので、WiiM製品をデジタル出力を前提とするストリーマーとして紹介してきたが、WiiM MiniもWiiM Proもアナログ出力が備わっており、機能として厳密にはネットワークプレーヤーといえるかもしれない。Proの場合はDACチップにバーブラウンのPCM5121を使用しているため貧弱とまでは言えないようだ。しかしながら、ノイズ、防振、クロック性能はオーディオグレードの単体DAC程の性能・音質は望めないだろう。イコライザや可変出力も備わっているが、同様だ。
ちなみに、Amazonのレビューで、TOSLINKで192kのハイレゾを再生したらノイズまみれだったというのがあるが、本来TOSLINKは96kまでしか保証していない企画なので、お門違いという指摘もあるようだ。
本製品は、本国(米国)では22年12月7日に発売開始され、少し遅れて日本でも販売されるようになった。
設定方法やレビューが凄く充実している価格コムのレビューページ
価格コムは、各種ガジェットの情報収集には貴重なサイトだが、歴史が古いサービスの弱点として、レビュー数や内容に物足りなさを感じるのが常だ。ところが、WiiM Proに関しては、驚くほどそれが充実している、中には設定方法も詳細に解説しているレビュアーがいるので、こちらはぜひ参考にしたい。
WiiM Proの仕様・機能
製品仕様
サイズ:140×140×42mm、重量:330g
Wi-Fi:IEEE 802.11 b/g/n/acデュアルバンドWi-Fi、Ethernet(100M)、Bluetooth:Ver5.1
電源入力:USB Type-C
音声出力:RCA(LINE-OUT) / 光デジタル(角型)/同軸デジタル(COAXIAL) /
音声入力:RCA(LINE-IN) / 光デジタル(角型)
SNR:102 dB、THD+N(LINE-OUT):0.005%
入力サンプリングレート:最大192kHz / 24bit
出力サンプリングレート:最大192kHz / 24bit ビットパーフェクト(ソースに依存します)
対応フォーマット:MP3 / AAC / ALAC / APE / FLAC / WAV / WMA / OGG
ネットワーク機能:AirPlay 2 / Chromecast Audio / DLNA / Spotify Connect /TIDAL Connect / Alexa Cast
主なストリーミングソース:Spotify / Amazon Music / Deezer / TuneIn /
TIDAL / Qobuz / iHeartRadio / Napster / Sound Cloud / VTuner / Calm Radioなど。MQAパススルー出力可能
コントロールデバイス:iOSスマートフォン・タブレット / Androidスマートフォン・タブレット / PC /Alexaスピーカー / Google Homeデバイス / HomePod etc
タッチセンサーコントロール:再生/一時停止 | ボリューム+/- | プリセット切替
※なお、2023年6月にファームウエアアップデートでRoonにも対応するようになった
付属品
ユーザーガイド×1、USB電源アダプタ×1、RCA to RCA ケーブル×1、USB Type-Cケーブル×1、光デジタルケーブル×1
オーディオシステムに組み込むには、音質向上対策はしておきたい
すでに説明したように、本来はPC周辺機器として開発されたと思われる製品。たとえサブシステムといえども、オーディオマニアが使うには以下のような対策はしておきたい。
また、購入当初はそのまま使ってみて、段階を追って対策して、音の変化を見守るのも楽しめそうだ。
WiiM Proの機能は絞り、ケーブルは良いものを使いたい
WiFi、Bluetoothといった電波機能は、オーディオの場合はノイズ源となるため、機能停止できるものはしておきたい。また、先にも述べたがイコライザ、可変出力、アナログ出力は使用せず、TOSLINK(光デジタル)も避けたい。出力は同軸デジタルで極力高品質のデジタルケーブルを使いたい(プラグが太いものは直接刺さらないため要注意)。
要の電源は強化したい
デジタル機器といえど、電源の品質は音質に直結する。付属のACアダプターは安価なスイッチング電源(これはオーディオの大敵)と思えるため、できるだけ早期にグレードアップしたい。
アナログ電源やバッテリー駆動、オーディオグレードのそれらの高価な機器など、オーディオの電源は上を見ればきりがないが、最低限、こちらで紹介したGaN電源を使うなどの対策をしたい。
なお、よく勘違いされるが、モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池は、オーディオ的にはよろしくない。内部に電圧をコントロールする回路が含まれノイズ源になるためだ。充電式を含むシンプルな乾電池の方がまだ良いといわれる。理想は車などの鉛蓄電池であるようだ。
ネット上で、実際にWiiM製品に使用した事例があったので、紹介しておく。
有線LANのノイズ対策は音質を大きく左右する
以前の記事で、有線LANの音質との関係性を取り上げたので、詳しくはこちらを参照してほしい。
光LANケーブルは何かと敷居が高いため、筆者の場合は、以下のような対策をしている。
- オーディオグレードの短すぎないLANケーブル
- 汎用品でも評判の良いスイッチングハブ
- スイッチングハブ、ルーター、NASにローノイズなアナログ電源や電源ノイズフィルター
- 入れすぎると逆効果なフェライトコアを適量適所に(慎重に音を聞きながら調整)
- 磁石活用のノイズ対策(効果大、詳しくはリンク先のYouTube動画を参照)
- アコースティックリバイブの、LANアイソレーターとLANターミネーター
アコースティックリバイブの製品については、以下の動画(画像クリックで動画再生)でインプレッションを紹介している。
WiiM Proの評判
オーディオ系YouTubeで第一人者といえる、おなじみTourbillonCafeのアンソニー氏は、動画の中で以下のように紹介している。ただし、まだ届いてないので音質面の評価は先送りしているようだ。
神ストリーマー、買わない理由はありません!
https://youtu.be/fjzBvDt94Cc?si=9sq3MZ9wC0SBMWyR
同じくYouTubeで、オーディオ製品のレビューを発信している「しけもく」氏は、ツイッター(現X)で、以下のように呟いている。
気になる方はこれは買った方が良いです。私は軽く衝撃を覚えています。
https://twitter.com/OnsiteAudio_sk/status/1653490414970896384
音質的には、当サイトの評価と同じく、高価なオーディオグレード製品には及ばないが、充分聞けると評価している。
先に紹介したAmazonや価格コムのユーザーレビューでも、概ね「しけもく」氏と音質評価は共通しているようだ。本記事で薦める音質向上対策を施し、どこまで化けるか、その事例を今後海外も含めて注目してみたい。
WiiM Proは、どんな人に向いているか
とりあえず(ハイレゾもともかく)聴ければよいという人は、従来機種のWiiM Miniで良いだろう。機能としては1万円台で納得できるのではないだろうか。
WiiM Proは、そうした機能に加えて、有線LAN、同軸デジタルという音質向上が期待できる製品た。そのため、AmazonMusicHDなどで快適にハイレゾを聴きたいという人は「もう誰もが買っておいてよいのでは」と思える内容とコスパの高さとなっている。グレードアップの余地が多い点も筆者からは魅力に感じる。
しいていうならば、中上級マニアのサブシステム用。数十万円のストリーマーやネットワークプレーヤーが高価と感じる初中級マニアや入門者となるだろう。
昨年YouTube動画で、大ヒット間違いなしと予言したが、今でもその思いに変わりはない。
音質強化版の「WiiM Pro Plus」も日本上陸間近!
執筆時現在は、日本国内での販売は確認できていないが、本国の米国では2023年8月に音質を強化した上位製品の「WiiM Pro Plus」が219ドルで発売された。要注目と思われる。
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