オーディオは演繹法ではなく、帰納法で考える(検討、理解、学習、仮説など)べきではないかと思う

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ハイエンドオーディオシステム

 オーディオに関心のない一般人や、初心者、入門者が、それなりにキャリアを積んだオーディオマニアの交わす議論などに入り口から引っかかって全く付いて行けないことが多々あります。

 代表的なのは、「ケーブルで音が違う」というような話で、経験がないと信じ難いと感じてしまうような内容ではないかと思います。経験がないから黙って経験豊富な人の話に耳を傾けていればよいかと思いきや、自分自身が信じられないという理由で、オーディオマニアを攻撃したりすることが珍しくありません。

 当ブログではこれを「オーディオ原理主義者(造語)」と呼んでいます。

科学やノウハウを検討する思考法には、演繹法と帰納法がある

 物事の原理原則などを思考していく方法には「演繹法」と「帰納法」があることはよく知られているかと思います。

オーディオは科学としてもノウハウとしても十分確立された分野ではない

 人類は当の昔に核爆弾や原子力発電を実用化し、有人宇宙ステーションや有人月面着陸を現実のものとしました。

 コンピューターを発明し、その後身近なPCやAIを生み出すまでに進化しました。

 一方で、当ブログがテーマにしているオーディオの世界は、特に電気を使用した音響の録音再生が実用化した1800年代後半(エジソンの蓄音機発明が1877年)より一世紀以上以上経過していますが、いまだ発展途上です。

 電子工学、音響工学、音響心理学などの科学分野をはじめ、工業、ノウハウ、プロ音響、趣味(HiFiマニア)として進化は続いています。同じく1800年代末に発明(どれを持って原型とするかで1900年代初頭という説もあり)された磁石を使ったマグネチックスピーカーが、いまだに音響製品の大部分で使われており、大局的にはあまり進歩していないという指摘もあったりします。

 実際に、オーディオ誌やオーディオ技術誌を読んだり、オーディオメーカーやオーディオショップ、評論家、音響のプロの話などに耳を傾けても、オーディオマニア間の意見すら統一されることはなく、議論百出状態が常になっています。

 つまり、調べれば調べるほど「科学としてもノウハウとしても確立していない」というのが現状ではないかと考えています。

デジタルオーディオが話をよりややこしくした

 百年以上の歴史のあるオーディオの進歩ですが、最近特に画期的だったのは、1980年代以降本格的に実用化された「デジタルオーディオ」だと思います。

 コンピューターのサンプリングによって、音を0と1の2進数のデータに変換して録音再生する画期的な方法です。2進数という分りやすい記号化であり、コンピューターの他の分野同様、データ化してしまえばアナログ電気信号のように劣化なく扱うことが可能となります。

 そこで、当初はこれによって、HiFi録音再生による音の劣化や音の変化はなくなるという幻想をオーディオメーカーも関係者やユーザーも抱いてしまった時期もありました。程なくして、データ量の多寡やアナログ回路含む音響機器のクオリティなどなどで、その理想は幻想であったことが周知されました。しかしその後も、ロスレスだのハイレゾだのデジタルアンプ(特にフルデジタル)、そしてPCオーディオやネットワークオーディオが登場するたびに「デジタルで音は変わらない」という誤解が増幅される状況が続きます。当ブログではこれを「デジタルオーディオ原理主義者(造語)」と呼んでいます。

オーディオ原理主義者の誤解はなぜ生じるのか?

 原因は、学校で習う科学ではないかと思います。

 学校で習う科学は、すでにかなり確立もしくは解明された科学分野の理解には大変有効です。しかし、未解明な要素の多い分野(原子核や素粒子とか、相対性理論などなど)や、技術、ノウハウなどでは時に誤解を招きがちではないかと思います。

 音響機器の分野では、電子工学的もしくは機器設計製造の実装分野、ユーザーの機器配置など、学校で習う科学だけでは、多くの誤解を生んでしまします。

 さらにデジタルオーディオでは、コンピューターに詳しい人や関連の職業の人ほど、その狭い分野の知見ですべてを推し量ろうとして疑わない落とし穴に陥り、前述の「デジタルオーディオ原理主義者」になってしまったりする、と考えています。

望むべき姿勢は演繹法ではなく帰納法

 これは、あくまでも音響工学や電子工学などの専門家や、オーディオメーカー、ショップ、プロ音響などのプロフェッショナルではなく、ユーザーレベルでの話です。

 HiFiオーディオの経験が少ない非マニアや入門者は、学校の科学を元に演繹法で自分なりに結論を出しがちです。経験が少ないので、経験の多い有識者の意見を参考にしようという謙虚な姿勢は何事にも有効ですが、そうではない人も少なからずいるようです。

 学校で習う科学や、非マニアの意見をもとに演繹法でHiFi再生について検討していくと、大方(間違いなく?)オーディオ原理主義的な結論に陥ると思います。

 オーディオマニア間の意見交換でも、経験の多寡が重視されます。環境的に多くの機器の試聴経験のあるプロはもとより、ユーザーでも自作マニアなど技術面の知見や、ハイエンドオーディオ所有者やオーディオ歴の長くてアクティブなマニアは、それなりに議論をリードする知見を持ち合わせていると思います。

例題としてUSBオーディオについて考えてみる

 PCオーディオのシンプルな形式として2000年代以降に普及して、現在も多く使われるHiFi再生の方式にUSBオーディオがあります。

 これを例にとって、今でも初心者が陥る「演繹法」的理解と、多くのマニアが経験を経て技術やノウハウが普及した「帰納法」的理解を比較してみましょう。

USBオーディオの「演繹法」的理解(誤解)

①PCは二進法の01でデータ処理するため、デジタルオーディオのデータ(音楽ファイル)に劣化はない

②USB接続は、HDDやUSBメモリなど、データ訂正技術を前提とした劣化や変化のない機器接続方式である

③①と②より、USBオーディオは、音楽データを常に完璧に伝送し、そのため音質の変化はあり得ない

実際のUSBオーディオは「アイソクロナス転送」を前提としており、上記は誤解

 以下は、デフォルトのアイソクロナス転送についてや、HiFi面でそれを改善するために実用化された「バルクペット転送」についての解説。これを読むと大方のことがわかると思います。

USBオーディオの「帰納法」的理解(実際にメーカーやマニアがたどった経緯)

①正確なデータ転送技術で用いられるUSBオーディオだが、実際にはケーブルなどで大きく音が変わる

②ケーブルのみならず、電源やノイズ対策、ジッター対策などのノウハウの進歩によって、機器の音質レベルが向上

③①②などなど、多くの事例や経験から、科学や技術面含めて掘り下げていくと、「音の変化要因は相当多い」ことが判明し、その対策レベルを機器の重要な評価要因とするようにした

ま と め

 USBオーディオのHiFiオーディオにおける進化の過程を見ると、帰納法こそ有効な発展のベースとなったことがよくわかると思います。一方で、経験の浅い初心者の演繹法は誤解の素であることも分かったと思います。

 すでに、USBオーディオに関しては、プロやマニアの世界では解明が一定程度進んだ分野なので、今ではAIでも冷静な回答が返ってくるような時代になっています。

 以下は、実際にAIに質問した実例です。

AI(Gemini)にUSBケーブルの音の変化について質問したら意外にも常識的で冷静な回答が

こんな質問をして見ました

 私はハイファイ再生の専門家で、高価なハイファイ機器を所有して使用しています。今回、私はPCとUSBDACをUSBケーブルで接続して音楽を再生します。

 この場合、高価なオーディオ用USBケーブルと安価な汎用USBケーブルでは、再生音の音質に変化はありますか?

AIによる回答

 ハイファイオーディオにおけるUSBケーブルの音質への影響については、多くの議論があります。高価なオーディオ用USBケーブルと安価な汎用USBケーブルの間で、音質に変化があるかどうかは、システムや個人の聴覚によって異なる可能性があります。

技術的な側面:

デジタル信号伝送:

 USBケーブルはデジタル信号を伝送するため、理論上は信号の劣化は起こりにくいとされています。
しかし、実際にはケーブルの品質によって、ノイズの混入やジッター(信号のタイミングのずれ)が発生する可能性があります。

ノイズ対策:

 高価なオーディオ用USBケーブルは、シールドを強化したり、高品質な素材を使用したりすることで、ノイズ対策を施している場合があります。
 これにより、外部からの電磁波ノイズや、ケーブル自体から発生するノイズを低減し、よりクリアな信号伝送を目指しています。

電源ラインの品質:

 USBケーブルは信号ラインだけでなく、電源ラインも備えています。
 PCからの電源ノイズが音質に影響を与える可能性があり、一部のオーディオ用USBケーブルは、電源ラインの品質にも配慮した設計となっています。

音質への影響:

個人の聴覚:

 音質の変化は、個人の聴覚や感性によって感じ方が異なります。
 また、使用するオーディオシステムの性能によっても、変化の度合いは変わってきます。

システム全体の品質:

 ハイエンドなオーディオシステムでは、わずかな音質の変化も検知できる可能性があります。
 しかし、一般的なシステムでは、ケーブルによる音質の変化はそれほど顕著ではないかもしれません。

プラシーボ効果:

 高価なケーブルを使用することで、心理的な満足感が得られ、それが音質の向上として感じられる可能性もあります。

結論:

 技術的には、高品質なUSBケーブルが音質に影響を与える可能性はありますが、その度合いはシステムや個人の聴覚によって異なります。
 高価なオーディオ用USBケーブルを購入する前に、まずは安価な汎用USBケーブルで試聴し、必要に応じてケーブルのグレードアップを検討することをおすすめします。
 また、ケーブルを変更するよりも、電源環境の見直しや、DACのグレードアップなど、他の要素に投資する方が、より大きな音質改善効果を得られる可能性もあります。

参考情報:

 オーディオ用USBケーブルの比較記事やレビューなどを参考に、ご自身のシステムに合ったケーブルを選ぶと良いでしょう。
 下記に参考になる記事のURLを記載します。

オーディオ用USBケーブルのおすすめ人気ランキング【2025年】 – マイベスト:https://my-best.com/5860

安価なUSBケーブルを比較試聴してみた – Audio-Beginner.Com:https://audio-beginner.com/post/comparison-of-usb-cables/

【USBケーブルで音が変わる?】オーディオ用USBケーブル3本を比較してみた。 – note:https://note.com/yullippe/n/ne21c94965f4a

汎用USB対決 果たしてオーディオ用USBケーブルは勝てるのか3 | DOCONOのオーディオ礼賛:https://ameblo.jp/docono38/entry-12853567738.html

汎用USB対決 果たしてオーディオ用USBケーブルは勝てるのか2 | DOCONOのオーディオ礼賛:https://ameblo.jp/docono38/entry-12853481899.html

 ご自身のシステムで実際に試聴し、音質の変化を確かめてみるのが一番良い方法です。

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