WE専門オーディオショップ「全音古董銘器」は、広州市高盈電子城3F
世界一オーディオが盛んなのではないかと感じた中国は広州旅行ですが、2番目に訪れたのはオーディオ店が集まる「高盈電子城」の3Fの少し奥に位置する全音古董銘器さんです。
まあ、写真で一目瞭然ですね。
垂涎のWE(ウエスタンエレクトリック)機器をはじめとするオリジナルのアンティークオーディオを扱っています。
見学許可がなかなか得られない中
最初がWEのレプリカ工房で、レプリカの音を聴いた後に今度はオリジナルを聴く機会を得て何だか出来過ぎのスケジュールでしたが、ここまでは私が渡した資料から、通訳がコーディネートしてくれました。
実は中国では取材はあまり歓迎されないそうです。
ブロガーとかホームページごときでは取材お断りというのは日本でもありがちな話ですが、そうではなくて、記者全般が好まれないようです。
その理由はちょっと書くのを差し控えますが、とにかく事前に取材のアポが取れたところというのは、逆に言えば、かなり商売に自信を持った優良事業者ともいえるようです。
こちらの店も、eBayなどでも幅広く出品されていて世界中からの買い物を受け付けています。
こうしたWEオリジナルをあつかう店は日本にもありますが、値段がすごすぎて普段は立ち入る機会がありません。
ご主人の翁文旭さんに話を聞く
話を聞かせていただいたのは、ご主人の翁文旭さん。
翁さんは、もともとオーディオが好きで安いスピーカーから始めたのだそうですが、ネットで調べていくうちに英語が堪能ということもありどんどん詳しくなって、約10年前にオーディオ機器の輸入事業を起業したそうです。
当初は香港からの仕入れが中心でしたが、アンティーク機器のオリジナルにこだわるうちに当然の事ながら、今ではネットを通じた友人ができて米国からの仕入れが主になったといいます。
現在は、eBayで海外からの注文がある他、店舗では来客の半分くらいが外国からということで主に東南アジアのマニアが多く集まるそうです。
ちなみに日本人はほとんど来ないそうです。
写真の正面にあるメインシステムはアンプもネットワークもWEオリジナルですが、スピーカーの一部にRCAを組み込んで少しバランスを調整したものだそうです。大体、この手のものは繋いだだけでは駄目ですから、ちょっとしたものは自作しているのかと尋ねたところ、あくまでもオリジナルに拘って組んでいるとの事でした。
それはそれで、相当の知識が必要ですね。
このメインシステムも一式で買うと当然一千万円を下りません。
にもかかわらず、自宅ではオールウエスタンの更にすごいシステムがあるそうです。
試聴させていただき驚きの結果が
という訳で、持ち込んだCDをスチューダーのプレイヤーで聴かせていただきました。ここまで同行してきている通訳は、現地の大学で日本語を専攻するという男子大学生の周くんですが、オーディオには全く造詣がありません。
日本の学生と同じでイヤホンでMP3を聴くのが音楽という程度の認識です。ところが、オーディオ取材道中2件目で少し目覚めてきたようです。何だか反応が違ってきました。
どうですかと聞くと「そこにジャズのバンドがいて演奏しているみたいです」と的確な答えが返ってきました。
そうなんです。
これだけ状態の良いWEのシアターシステムだと、正に本物の演奏を聴いているように聴こえます。
音の立体感がそんじょそこらのオーディオとは全く違って聴こえます。この手のシステムは過去に何回か聴きましたが、こちらが一番でした。
WEは、もともとベルの子会社
WEは、もともとベルの子会社で電話の交換機類や映画館など劇場のPA装置を製造する1940年代の米国のメーカーで、NECも最初はそこの日本法人として電話関連の製造を目的として設立されたそうです。
オーディオ的には300Bなどの真空管類も有名ですが、自作派には電話用の真空管もWEだと音が良いなどという評判が多く聞かれます。プロ用機器オンリーでしたので(当時のコンシューマー向けの大手はRCAです)アンプやスピーカーから真空管までリースだったそうで、300Bも以前は入手が難しかったのはこのためです。
当時の劇場や映画館が取り壊されたり改装されるようになって、ようやくオーディオマニア間に機器が取引されるようになり、その時代を超えた性能の高さは有名です。
管球王国という雑誌は、マニアの別名が「ウエスタン礼賛誌」です。
当時の電話関連産業というのは、まさに最先端の工業分野で、今で言えば少し前のNASAなどの宇宙産業やバイオテクノロジーというハイテク産業でした。
当然、全米および世界中から理系の大学出の就職先として花形で、世界の優れた頭脳が集まって、潤沢な研究予算でしたので今とは比べ物にならないノウハウが集積したようです。
オーディオ的にも一部のノウハウはJBLやアルティックなどに伝承されましたが、まとまったノウハウの伝承は無く、「現代のオーディオは70年前のWEを超えられていない」という嘆きはしばしば聞くこととなります。
ケーブルで音が変わる、というノウハウは80年代に日本のオーディオ界から出てきたものですが、WEのケーブルは当時から振動対策なども施されており、今ではすっかり見直されてオリジナルやレプリカがマニアに重用されています。
おそらく伝承されなかった音のノウハウがまだまだあるのではないかと筆者は考えています。
一般的な音の評価は、元が劇場のPA目的ですので、浸透力のある音で少し音をくま取ったようなメリハリがあり実体感に優れる、といった感じでしょうか。
真空管アンプと励磁(フィールドコイル)スピーカーを突き詰めていけば、そうした傾向の音が出来上がると筆者は解釈しています。
今後の買い占めは大丈夫か?
翁さんと話していて気が付いたことがあります。
中国は正に発展中で、WEなどのアンティークオーディオの知名度はまだまだ高くありません。
しかし、人口も多く、ものすごいお金持ちも多く存在する国ですから、知名度が高まると、ウン千万だろうが良い物を求める人が買うようになると思います。
そうなるとあっという間に、WEのオリジナルなどは市場から無くなってしまうのではないでしょうか。
値段も更に高騰して、えらいことです。翁さんも「そうかもしれませんね」と笑っておられました。
住所:広州市海珠区南華中路388高盈電子城A310
電話:34074700
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