(2023年5月加筆)本記事でご紹介した「植木ラボ」代表の植木守氏が、急病で倒れ入院されました。具体的にはこちらをご参照ください。
Facebookで情報共有しながら高性能のオーディオケーブルを製作する植木ラボさんから同軸デジタルケーブルをお借りできたので、試聴した。
植木ラボについては、前回のセミリジッドケーブルの記事で詳しく紹介している。
どんな製品なのか?
植木ラボを主宰する植木氏は、前回の記事でもふれたが、SNSで情報公開しながらオーディオケーブルの製造販売を行っている。加えて、多くの類似ガレージメーカーや頒布マニアと異なり、価格帯で見ると大手メーカーのハイエンド製品まではいかないが中級製品レベルであり、コスパを前面に打ち出している訳ではない。
なぜそうなのか?先日、植木氏のSNS投稿でその謎が解けた。
素線(0.18)の必要本数を撚り線にし、皮膜を被せ1本を電線を作りります。
Facebook投稿より
それを合わせて製品や試作品を製作しています。
その為に1本作るのに1〜2日の時間が掛かるのです。
言い訳です。(笑)
手抜きをしないで製作すると時間は掛かるのですね。
手作りで、1本に2-3日という丁寧さは、それなりの価格になることは頷けるし、多くのシンパは、それでも性能が良いと喜んでいる。
製品の詳細・仕様
こちらが、今回のベースとなった製品の紹介と仕様となる。これにEMS処理を加えたのが、今回お借りしたバージョン。
※リンク先より転記
●UEKI-LABのハイエンドタイプのSTMの最高峰(グラン・クリュ)モデル。
●STM/グラン・クリュとは、ワインの名前使わせていただいています。
●STMモデルを基本に二重シールドより静かで表現力が豊かです。
●音質はどの様に良くしていますか?
製作したDAC・AMPのノイズ遮閉方法を使用
導体はノイズに強い同軸構造です。
75Ωの圧着RCAプラグ使用これらの事でジッタを抑えた、
ひずみの無い音色の静かなケーブルに出来上がっています。(弊社比率)
●新素材PC-Triple C(連続結晶高純度無酸素銅)
(導電率101.5IACS%)を使うと、一つ一つの楽器の
音がくっきり聞こえます。(弊社比率)
●仕 様
仕上:DG-STM/gc-0.7 0.7m
導体:PC-Triple C 同軸構造
直径:7.6mm
●標準価格:52,000円
※PC-Triple CはFCM株式会社及び株式会社プロモーションワークスの登録商標です。
デジタルケーブルはエージングが大変
エージングは必要ないとかナンセンスと主張されるマニアも少なからず見かけるが、当サイトは経験上それを重視する(相互の思想信条の自由は排除しない)。
通常は、エージング中はなるべく音に集中せず先入観が入るのを排除する。しかし、我慢できずに少し聴いてしまった。以下は途中経過なので製品の評価とは別として解釈してほしい。SNSへのコメントを転記する。
エージング中の雑感(SNSより転記)
単なる途中経過です。
初日は未エージング状態(我が家では)のためか、SNの良さ、音のスピードには目を見るところがあったのですが、低音の量感乏しくて、JBLのLE-8Tのバスレフポートに失敗したような感じの音(分る人いるかな?)でした。
植木さんのメッセージに励まされ、本日二日目。
昨日と全然違います。
ラインケーブルは元に戻したので、それまで聴いていた彫りの深さは後退したものの、音楽を楽しめる、楽器とボーカルが「オーディオ的に」よりそれらしく聴こえます。
本日感じたのは「ヤマハのスピーカーを聴いているみたい」(これも分かる人は?)。
ヤマハは楽器メーカーなので、主力のフォークギターとピアノの完成度に拘る(単なる個人の思い込み)。
センモニとかじっくり聴いたことないですが、こんな傾向かな、などと思いつつ聴いております。
明日はどう変化するやら?
1週間経過後の本試聴
比較対象の同軸デジタルケーブルは
これまで常用してきた同軸デジタルケーブルは、サエクのこちらとなる。かなり前に5-6本中古で定価2-5万円くらいのケーブルを買い集め、入れる場所によって勝ち抜き戦を行って決めたケーブルだ。とはいえ、当サイトはケーブル評価はメインではないので、あまり厳密なものではない。
発売年を見ると2003年とある。本記事執筆は2023年なのでもう20年前の製品かと改めて驚いた。当時の定価は税抜きで22,000となっていた。
試聴した印象は
デジタルケーブルは、エージングしてドンドン印象が変わるので、どこで見切りをつけて本試聴に入るか悩ましい。途中、製作者の植木氏に励まされつつ約1週間が経過した。色々聴いたが、象徴的なのは以下の曲であった。
本来、あまり試聴に使わない曲。カントリー系など楽器数が少ないポップスが特徴をあらわしているように感じた。
この曲は、ボーカルはあえてHiFi的ではなくむしろラジオで聴いているような処理がされているように感じる。ジョン・レノンの声質から概ねそうしているように思える。ケーブルの特徴として、他の曲でもボーカルやメインの楽器ではその特徴を見出し辛い。
一方で、サブ的に入るパーカッションや特殊なギター系弦楽器(バンジョーとかスチールギターなど)、そしてバスタむとかウッドベース、これらが実に締まった美しい音色で聴こえる。中央ではなく脇に配置されるため、その定位にも優れている印象。
ケーブルをサエクに戻すと、一転して音場が広がり音楽のスケールが大きく、サブの楽器も含めて全体の演奏として統一され華やかに感じる。
この差は、好き好きなのか、植木ケーブルのジッターが少ないが上に音のにじみが減った所以なのか?厳密なことは筆者には不明だが、おそらく後者と類推している。
また、エージング初日に感じた「音の軽やかさ」は随所に良い方向に感じられた。
クロックケーブルとしても試聴してみた
この実験は邪道なので参考にならないと思うが、クロックケーブルとして使用してみた。比較対象は常用しているワイヤーワールドの古い本来は映像用のBNCケーブル(これも勝ち抜き戦で残ったもの)。
経験上、ここのケーブルを変えると最も変化が大きいため「変わるか変わらないか?」について試した次第だ。結果はかなり変わった。
個々のケーブルの性能が上がると、クロック源のルビジウムクロックの音の傾向が強まる。ところが今回は、ルビジウムの焦点が合った細かい音になる傾向とは少し違った。DACの時の印象に近い「軽やかさ」はあるが、中域が分厚い。一方で低域は締まった軽さがある。
この軽・重・軽というバランスは、過去にない新鮮な印象だった。伝統的なマスタリングの古いポップスやジャズ・クラシックは、あまり違いは感じないが、最近の音源に多いPCミックスと思われる音源(DTM出身のJPOPやEDM、KPOPなど)を聴くと、音源制作者の意図を反映して実に魅力的に聴こえた。
翌日は、すべてがWell Balance
クロックケーブルとして繋いだまま、お借りした期限の最終日を迎えた。繋いだままだったので24時間以上エージングがさらに進んだことになる。どうだろう?昨日感じた細かい特徴が、すべてに良いバランスで調和してきた。
個人的にというか、筆者の過去の経験から、このクロックケーブルで真価を発揮するという事は同軸ケーブルとして高い性能があるという証ではないかと考えている。植木氏からは「受け機ラボの過去最高の同軸ケーブルです!」と強調されていたのは、全くうなずける結果となった。
まとめ
高価なデジタルケーブルを長期試聴する機械などほとんどないため、その手の知見は高くなく、充分な評価になったか全く自信がない。
しかし、植木ラボの説明にある「一つ一つの楽器の音がくっきり聞こえます」というのは、本ブログ執筆前は見落としていたにもかかわらず、結果は一致していた。
植木ラボでは、他にも電源分離型USBケーブルとか、XLRケーブルもラインナップされている。
Facebookで気軽に、その詳細や開発情報などを知ったり、植木氏と意見交換しやすいことから、ケーブルに関心の高いマニアは注目すべき存在ではないかと考える。
なお、植木氏からは「開発者としては、日本の最高だと考えています。」というコメントをいただいた。
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