スピーカーのPreference値(Preference rating) とは何なのか?
この章の見出しに「Preference値」と書いたが、正確には 「Preference rating」だ。「PR値」といういい方もあったような気がしたが、あたらめて検索するとそういういい方は見当たらないので、私の勘違いかもしれない。
まだ日本語の略語として定着していないようなので、あくまで便宜上ここでは「Preference値」と記載する。原語だとかなり固くなるので少しでも分かりやすくするため(元が相当難解なので)。
そこで、その Preference値 だが、国内では最近、技術志向の自作スピーカービルダーなどが中心になって関連書籍「自作スピーカー 測定・Xover設計法 マスターブック」や「シミュレーションと測定による自作スピーカーのクロスオーバーネットワーク設計」が発行されたり、にわかに注目を集めているスピーカーの性能指標である。
Preference値を導き出す元の測定方法である「スピノラマ(SPINORAMA)」で調べた方が分かりやすいかもしれない。こちらのカノン5Dさんの解説が分かりやすい。
語弊アリアリながら、掻い摘んでいうと、従来のスピーカーの性能を調べるための周波数特性の測定は、軸上で計測していたのだが、これに加えて、一次反射に影響の大きい軸外の計測データも含めて総合的に評価していくという方法がスピノラマ。そこで示された五つくらいの指標から、最後に10点満点の何点かという値でざっくりスピーカーの性能を示すのが Preference値 というもののようだ。
※日本語の資料が少なく技術的で難解なため、指摘があれば修正しますのでコメントください。
サブウーハーの有無について
少しユニークなのが、 Preference値 には元の採点と、低域をサブウーハーに補せた場合の値の2種類出されているという点。資料によっては、イコライジングも加えた採点も有ったりする。
Preference値自体が、「多くの人の主観で良いと評価されるスピーカー」をデータで測定・算出しよう、という考え方なので、サブウーハーを加えようがDSPでデジタルイコライジングしようが、最終的に良い音なら良しという考え方なのだろう。
実際に採点の高いスピーカーは、スタジオ用のサブウーハー機能内蔵、デジタルイコライジング他DSP内蔵、アクティブスピーカーだったりする。わかりやすいのでは「Genelec」など。
KEFのスピーカーが健闘
こちらが、Speaker Data (beta)としてネット上に公開されているPreference値の表である。スタジオ用モニターやハイエンドスピーカー、アクティブスピーカーが上位を占めているが、本ブログの読者の中心と思われる、私を含め一般的なオーディオマニアの関心領域の製品では、KEFのミドルクラスコンシューマー向けスピーカーが存在を放っている。
同様のデータは、pierreaubert.github.ioでも公開されている。前者は元の「LS50」のデータしかないが、後者には新型の「LS50 Meta」の採点が載っており、5.7の高得点となっている。
その他、ミドルクラスの3機種の採点と、価格を並べて見ると以下の通りとなる。
- 「LS50 Meta」→ 5.7、(サブウーハーを加えた場合)→7.7、¥145,000(ペア、税別)
- 「R3」 →6.5、(サブウーハーを加えた場合)→8.2、¥300,000(ペア、税別)
- 「Q350」 →5.6、(サブウーハーを加えた場合)→7.4、¥68,000(ペア、税抜)
価格の順と、採点準はかろうじて逆転はないが、微妙な数字ではある。
以下は、実勢価格を見るため、AVACなどの商品リンク(商品によっては後継機に更新しています)。
同じようにPreference値に注目して試した方が
クオリティの高いオーディオ記事で有名な、Innocent Keyオーディオ部さんが、実際に買って試され報告記事を公開していた。空気録音付きだ。
どんな製品なのか(LS50 Meta)
ここでは代表的な、LS50 Metaについて、その製品紹介を紹介する。
まずは、KEFのお家芸ともいうUni-Qドライバーを採用した、同軸2way単一ユニットのバスレフスピーカーというのが、その概要となる。進化を繰り返し、第12世代というMAT搭載というドライバー。
メーカーの説明文では
この新たなドライバーアレイは、カラレーションや音の歪みを削減し、以前よりも更に透明感のある自然なサウンドを、部屋の隅々まで均等に放ちます。
https://jp.kef.com/pages/ls50-meta
と説明されている。
大ベストセラーとなった「LS50」を、さらに改良したという強力製品だ。改良のポイントである「Metamaterial Absorption Technology =MAT」は、複雑な迷路の様な構造で、ツイーター背面のノイズを99%吸収し、音の歪みを削減し、より透明感のある自然な音を実現するというものだ。
LS50から引き継いだ曲面バッフルと、内部の「フレキシブル・ポート」というのも特許新技術の投入となっている。結果的に、中域のTHDも0.1%から0.07%へと性能向上している。
国内の評価は
Stereo Sound ONLINEでは、評論家の潮晴男氏がレポートを寄せている。
(要約)コンパクトスピーカーにありがちな、音が詰まった感じは一切なく、サイズからは信じられないような伸びかで心地よいサウンドを再現。中高域にかけての歪み感の少なさは謳い文句通りで、そうした印象が落ち着きのある再現力につながっている。
クラシックでもピアニシモにおける弦楽器の細かな音をよく拾い上げる。劇場の響きをよく再現するし、グランカッサの強力なエネルギーもしっかりと受け止めている。
大型システムに負けない表現力を持つ新製品として、オーディオファンだけでなく、お洒落な音楽生活を送りたい音楽愛好家にも注目してほしい逸品。
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17394662
広告の御礼も含まれるだろうが、かなり文字数を割いてべた褒めしている。実際に旧製品のユーザーであったことも明かしているので、信憑性は高いと思える記事である。
海外の評価は
イギリスのオーディオ誌「Hi-fi News」では、以下のような評価になっている。
(要約)ヒップホップの試聴にて、私は曲全体でより乾燥した、よりオープンなアッパーベースと、より風通しの良いパーカッション、ボーカルのリアリズム、そしてさらに高度な付加価値を見出しました。オリジナルのLS50を、紛れもなくより味わい深いという印象です。
通常の音量レベルをはるかに超える再生でも破綻はなく、よりリアリズムが高まりました。速く、より鮮明なトランジェントで、その減衰がよりスムーズでありながら、すでに甘い音のLS50よりも歯擦音の兆候を示す可能性がさらに低いです。
私はこのスピーカーが大好きです。巨大なサウンドステージ、寛大な低音、素晴らしいイメージングです。
https://www.hifinews.com/content/kef-ls50-meta-loudspeaker-page-2
こちらも、かなりべた褒めである。
どうやらPreference値の高さは、人の評価の高さに一致しているようだ。前作が大ベストセラーであったので、高評価は当たり前とも思えるが、内外の評価者は、一様に明確な進歩を感じていると伝えている。
ラインナップとして
今回紹介した「LS50 Meta」と、同様にPreference値の高いブックシェルフの「R3」「Q350」については、どうやら購入しても間違いない製品のようだ。
コストパフォーマンス的に、それらをどうとらえるかは微妙なところであるが、これ以外にも、同社のラインナップはトールボーイやセンタースピーカーなど充実していて、選択肢は多いといえる。
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