話題性の高いSOULNOTE(ソウルノート)の完全バランス無帰還プリメインアンプ A-2の研究

2017年に発売されたパワーアンプに近いプリメインアンプ

発売が、2017年12月なので、本記事執筆時点からすると3年前に発売された製品だが、いまだに話題性が高い。同ブランドのシリーズ最高グレードのアンプとなっている。

SOULNOTEは、株式会社CSRの音響機器ブランドで、日本のメーカー。同ブランドは2006年に、かつてNECで銘機として有名なA-10を開発するなど、オーディオ業界でも有名な代表者兼エンジニアの鈴木 哲氏(プロのギタリストであるということも有名)がCSRの下で同ブランドを立ち上げた。

2016年に鈴木氏が同社を離れ(Fundamentalというブランドを立ち上げ)、新たに”新生SOULNOTE”が誕生した。

そこからは、現在の加藤秀樹氏が開発・設計責任者を務める新しいラインナップになっている。鈴木氏時代も個性的な製品が特長だったが、加藤氏の体制になって、さらにコンセプトが明確で絞り込んだ製品を出すようになった。

加藤氏は、技術情報もかなりにおいて公開していく方針で、達筆・饒舌な人柄だけに、フェイスブックやツイッター、最近ではYouTubeなどのSNSでも活発に活動し話題に事欠かない。国内オーディオ誌でも発売期には多く取り上げられるが、加藤氏によると、これはSOULNOTE側からの働きかけ(例えば広告出稿など)以上に、オーディオ誌側からの製品についての評価の高い話題性によるものらしい。

現在のところ、パワーアンプとしての製品は発売されておらず、パワーアンプにアッテネーターを付けたプリメインアンプ的なアンプがAシリーズとして「A-0」「A-1」「A-2」としてラインナップされている。「A-2」は、¥550,000(税込)で、執筆時における価格コムの最安値が¥480,700(税込)となっている。

同社の価格コンセプトがハイコストパフォーマンスとなっているようで、一般的なオーディオメーカーであれば100万円を下らない内容だが、こうした価格設定自体も話題性の一つとなっているようだ。

また、このアンプのAシリーズには、下位機のA-0(\121,000、税込)とA-1(¥187,000、税込)がラインナップされている。

製品(A-2)の特長は

SOULNOTE A-2 公式サイト紹介ページ
公式サイト(https://www.kcsr.co.jp/detail_a2.html)より引用

同社の製品の特長を語る場合、その大部分が技術論にならざるを得ない。ただし、コンセプトが明快なので、他の製品のように、たとえ技術論であっても難解で無味乾燥な内容にはならない。

具体的には、無帰還というのが、その大きな特徴である。アンプは、真空管アンプの時代から製品として使える性能を出すために負帰還(NFB=ネガティブフィードバック)という技術が多用されてきた。

NFBは、出力の一部を反転させて入力回路に戻す技術。増幅回路で加わったノイズや歪を自らの出力で削り取り、特性を向上させる技術である。SN比、歪率、周波数特性、ダンピングファクターなどカタログに記載される静特性が向上する。一方で、静特性は向上するが音の躍動感などが損なわれ動特性(音楽を増幅して聴く際の本来の性能)は低下するのではないかという議論が、大昔から存在する。特にトランジスタアンプでは、NFBなしは不可能と解説される場合も多く、メーカーは必要悪と感じても、その量やかけ方を工夫して高い音質を達成するのが一般的と考えられてきた。

同社のサウンドマネージャーである加藤氏は、以前在籍したマランツプロ時代から、この問題に取り組み、NFBの無い(つまり無帰還)製品の開発に成功している。だだし、一部の局部帰還はあるようだ。

このような明確で大掛かりな一般製品との違いがあれば、試聴しても大部分の人が、明確な違いを感じるであろう。さらに、技術志向のマニアであれば「聴きたい」「所有したい」と思うことは少なくないと考えられる。このような特徴が、無帰還以外にも、さらにはアンプ以外にも多く含まれているのが、同ブランド製品の特質だ。

他にも、完全バランス増幅や、リレー切り替え式抵抗アッテネーター、高度に選別されたトランジスタの使用、最短化&無接点配線、筐体の工夫、強力電源回路など技術面で施された工夫は多く、その大部分が数値特性のみならず音を聴きながら調整したというものだ。

国内での評価は

発売時の各オーディオ誌での高評価はもとより、オーディオアクセサリー社のオーディオ銘機賞や誠文堂新光社のMJ(無線と実験)テクノロジー・オブ・ザ・イヤーなどを受賞している。ステレオサウンド社のデジファイ29号では、評論家の和田博巳氏が試聴レポートを寄せている。ジャズトリオでは「ピアノの流麗なタッチに加えてドラム、ベースの厚みのある音が印象的」、女性ボーカルでは「鳥肌が立つほどエモーショナル」「ソプラノがエネルギー全開で迫ってきた」、使用スピーカーMB2-SEの強力なミッドレンジユニットを存分に鳴らしきり、さらに低域でそのパワフルな中域をしっかり支えている」、オーケストラは「描写も精細にして緻密」と評価している。

有名オーディオショップでは、Josinが同社のサイトで詳細なレポート記事を公開している。「サウンドは、低域が引き締まり、音程も超低域までしっかり」「中域は滑らかなのに芯はしっかりしており、エネルギーたっぷりで充実感のあるもの」「高域は透明感が高く、立ち上がりが小気味良く十分な余裕」と全体のバランスを評価し、ボーカルは「堅さはなく滑らかで、抜けの良いリアルな声」「ただ少し若く感じたのは、伸びやかさやハイスピード故かも」、音場は「奥行き方向が非常に深く、左右にも十分な広さ」、さらに「見通しの良いサウンドは、S/Nの高さから来る見事な静けさの再現」とこちらも高評価だ。

ユーザーレビューでは、価格コムに書き込まれた内容が参考になった。「これほどそのマンマ感が出ているアンプを近年聴いたことがありません」「音をまるで作っていない」という評価のユーザーや、「ライブ録音では、これまで気にならなかった客の咳払いが明瞭に聞こえてしまうようになりました。それほど、S/N比、解像度が高く臨場感のある音です」など。

また、オーディオライターの逆木一氏は、自身でA-2を導入しブログに熱いメッセージを書いている。「音が生きている」「音楽が生きている」「身震いするほどの躍動感」「目を見張る中高域の俊敏な立ち上がり」など絶賛である。

海外の評価

メーカーの現体制での歴史が浅く、母体があまり大きくないことから、海外展開は大規模ではないようだが、製品レビューはいくつか見つける事ができた。

ポーランドのオーディオWEBマガジンである「HighFidelity」では、かなり詳しくレポートされている。

この記事によると、SOULNOTEを展開する株式会社CSRは、日本マランツから独立した社員によって設立された企業で、日本マランツのブランドとしての源流が、ポーランド系アメリカ人のソール・B・マランツが1953年に設立さした米国マランツを源流とすることが紹介されている。

ここでの音質的評価としては、「信じられないほど自然に聴こえる」「他のすべてのアンプは、比較すると機械的に聴こえる」とされ、ジャズでは「以前のデュダスカリアと同じように、つまり信じられないほどの音の彩度とその美しい一貫性」とかなりの高評価である。ただし、一般的なアンプのように作られた音ではないため、すべての人の好みに合うとは限らないとも評している。一般的なハイエンドアンプは「作られた美音」ではないか?という議論がオーディオマニアの間でしばしば見受けられるが、それと似た問題提起かもしれない。

同じくポーランドのオーディオサイト「StereoLife」でも、詳しいレポートが上がっている。

一風変わった試聴レポートで、最初の試聴では、試聴室のヒューズが飛んだことからスイッチを入れた直後に手早く行ったため「音はとても心地よく、まとまりがあり、カラフルだが、ダイナミクス、解像度、スペースの観点では期待したほどではなかった」と一部辛口の評価。しかし、その後30分の追加アイドリングタイムを加えた後は評価が一転。「それは明らかにスピードを上げ、形、輪郭、強さを帯び、細部に満ち、部屋を音で満たし始めた」と欠点のない内容に変わっている。

香港の「パーソナルオーディオ香港」でも、「周波数バランス偏りがなく、それは確かに驚き」「音は過度の鋭さなしに十分な分析力を持つ」「ボーカル、ピアノ、バイオリン、ジャズではパワーも強く、微妙な変化を感じ、楽しむことができる」「低域は厚くも薄くもなく、さわやかで機敏で、音は十分に速い」というような評価をされている。

少し変わった評価としては、評者の個人的意見としながらも「スロー・ミディアムの声楽やジャズ音楽に優れていると思う」と書かれている。

製品仕様

出力: 100W×2(8Ω) ,200W×2 (4Ω),400W (BTL MONO 8Ω)
全高調波歪率: 0.03% (50W 8Ω)
周波数特性: スピーカー(8Ω 1W):3Hz~240kHz (±1.0dB)
入力感度/インピーダンス: LINE1,2,3(バランス):700mV/16kΩ , LINE4,5,6 :700mV/8kΩ
S/N比: 110dB(IHF Aネットワーク)
消費電力: 355W(J60065), 125W(アイドリング時)
最大外形寸法: 本体: 430(W)×160(H)×423(D)mm、約20kg
付属品 リモコン、スパイク、電源ケーブル
色:プレミアム・シルバー、プレミアム・ブラック

(CSR公式サイトより抜粋)

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