前回に引き続き、東京のレコード会社のスタジオで修業し、地元の金融機関に就職したものの勤務先公認で地元ライブのミキシングやスタジオレコーディングのエンジニアとして二足の草鞋を履いたという関井久夫さんのスタジオ訪問記です。
聴き疲れしないプライベート・リスニングの音
前回もふれた、仕事とプライベートの音の違いを少し振り返ります。
業務用のスタジオの音というのは、別のいい方をすると「粗探しをするための音」で、情報量が最大要素となり通常マスタリング作業で市販音源では削られる「不快な音、余計な音」も含めて分析的に聴ける音でなくてはなりません。
https://globalaudio.info/post-4064/
一方のオーディオリスニングの音は、「心地よく聴ける」「聴き疲れがしない」という要素が重要
仕事を離れて純粋に音楽を楽しむときは、真空管アンプなどに繋ぎ変えて聴くとのことです。
スピーカーはタンノイ「オートグラフ」(スタジオ業務のラージモニターとしても活用)
このオートグラフは、タンノイの創業期の1953年から2000年まで製造販売されたスピーカーだそうです。
オーディオの足跡さんのサイトによると、タンノイ伝統の同軸スピーカーで、38cm口径で2Way。
- 周波数特性 50Hz~20kHz ±4dB
- 公称インピーダンス 8Ω(5.5Ω最小)
- 許容入力:70Hz~1kHz: 120W(連続)、500W(ピーク);1kHz~20kHz: 60W(連続)、250W(ピーク)
- 出力音圧レベル 96dB/W/m(50Hz~20kHz)、116dB/120W/m(50Hz~20kHz)、123dB/500W/m(ピーク)
というスペックで、古い時代のスピーカーの共通点である、かなりの高能率スピーカーです。これなら、シングルの出力少なめの真空管アンプでも大丈夫ですね。
パワーアンプは、300Bシングルの真空管アンプ
パワーアンプは、300BでWE(ウエスタンエレクトリック)というので、てっきりWEの真空管(筆者も復刻版所有)の話かと思ったら、真空管だけでなくアンプ自体もWEとのこと。
こういう大ベテランのマニアを訪問すると、こういう「後光がさして見えるような凄い機器」を見たり聴いたりできることがあるが、今回も果たしてそうでした。
プリアンプは、すごく珍しいWE製のマッキントッシュ
プリアンプが物凄く珍しいもので、おそらく筆者は生涯再び見る事ができないようなものでした。というのも、製造会社はWEで、製品がマッキントッシュというもの。
WEとマッキントッシュというのは、同じ米国でもまったく別のオーディオメーカー(WEは現存しない)という認識でしたが、昔は何だか繋がりがあったようです。
OEM的な製品なのか、あるいは電気製品にありがちな、部品は他社というのもなのか?思い出したのは、DENONがデンオン(日本コロムビア)だった頃、放送用や業務用の機材が強く、その優秀なターンテーブルは東芝のモーターを使用していて、同社の技術者がそれを自慢にしていたという昔話です。
貴重な音源が沢山ありました
まずはスタンダードなCDが数多く
当然、スタジオなので普段は仕事ですからCDは数多くあります。仕事としてかかわった(公式サイトによると大黒摩季さんなどの名前もありますが、実際にここで歌撮りしたのは、大黒摩季さんではないもののかなりの大物が少なからずという話でした)CDは厳選されたものが壁一面にありました。
さらにCDコレクションが
さらにはお宝のテープデッキとオープンリールテープが
実は、スタジオと隣接する機材置き場でひときわ目を引いたのが、スチューダーのオープンリール・テープデッキ。
さらには、仕事で関わり、著作権その他の関係で世に出せないような貴重な音源が数多くテープで保管されています。
これ以上、UPで掲載できないような、ビッグネームも多く含まれています。
実は、筆者も過去に5-6年音楽業界に関わったことがありますが、今更よに出せないようなビッグネームのデビュー直前のライブビデオ(自分で記録用に撮影)を持っていたりします。
長年、音楽業界に関わった関井久夫さんは、それとは比較にならない位多くのお宝音源を所有している訳です。著作権的にも内容的にも、外には持ち出せない代物です。
ケーブルも仕事の音用とは違うそうです
機材を入れ替えただけで、仕事用の音がプライベートで楽しむ音に変わるかというと、そう単純なものではないそうです。
ケーブルの場合は、スタジオ用からオーディオ用に安易に変えると「情報量」がかなり落ちて、単純にはいかないそうです。
植木ケーブルが、その狭間を埋めた!
そこで、今回、比較試聴も含めて聴かせていただいたのが、今回の紹介者でもある植木守氏製作の「植木ケーブル」。
通常の、業務用ケーブルから変えても、一般的なオーディオグレードのケーブルと違い情報量が落ちない。それでいて、やさしい音に変化して、聴き疲れがないプライベートリスニングに効果的な音になります。
実際に、その辺かを聴かせていただいて、その通りと感じました。
次回は、その紹介者の植木ラボ代表、植木守氏と、ムーン・コールド・スタジオの関井久夫さんの関りについて、ご紹介したいと思います。
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