どんな製品なのか?
S.M.S.L D6sは、エントリーからミドルクラスのDAC市場において高い人気を誇る製品だ。日本での発売は、2023年9月。執筆時時点で最新のESSのDACチップを搭載している点でも注目されている。本記事では、S.M.S.LのD6sについて深堀りし、オーディオマニアに向けて、その特徴や魅力を分析してみたい。
D-6sの主要スペックと製品の特徴
- DACチップ: ES9039Q2M(ESS社製)
- 対応最大フォーマット:USB: PCM32bit/768kHz、DSD512、光/同軸: PCM44.1-192kHz (24bit)、 DoP64
- Bluetoot:バージョン: 5.1、Bluetooth コーデック: SBC、AAC、aptX、aptX HD、LDAC
※Qualcomm の最新 Bluetooth チップ採用 - 入力: USB、光、同軸、Bluetooth
- 出力: RCA、XLR
- その他: MQA対応、クロックジッター低減回路搭載
- THD+N: 0.00006% (-123dB)
- ライン出力振幅:XLR: 5Vrms、RCA: 2.5Vrms (1.13Vrms)
- 出力インピーダンス: XLR: 100Ω
- ダイナミックレンジ:XLR: 129dB、RCA: 126dB
- SN比:XLR: 129dB、RCA: 126dB
- 消費電力: <10W、スタンバイ電力: <0.5W
- サイズ: 150x42x128.5mm (幅x高さx奥行き)、重量:0.71kg
メーカー公式サイトのリンクと説明内容
4 つのハイエンド デュアル オペアンプ OPA1612 と多数のオーディオ グレード コンポーネント使用。
最新の第 3 世代 XMOS XU-316 は、PCM 32 ビット/768 kHz および DSD512 サポート。
オーディオ クロック処理回路はクロック ジッターを大幅に低減。
入力ポート(Bluetoothを除く)はMQAとDSDをサポートし、同軸と光はDoP64サポート。
特別設計・自社開発による低ノイズスイッチング電源と、複数のアナログ回路の低ノイズ電源内蔵。
高品質金メッキ入出力コネクタ。日本オーディオ協会(JAS)Hi-Res認証、フル機能のリモコン装備。
ESS社の最新DACチップ、ES9039Q2Mについて
高いS/N比、低歪み率がもたらす音質
ES9039Q2Mは、ESS Technologyが開発した最新、高性能DACチップだ。ESS社は、現代のHiFiDACチップの市場でAKM(旭化成エレクトロニクス)と並ぶ2台メーカーといわれ、世界中の、多くのハイエンドオーディオ機器に採用されている。※この2社に日本のローム(ROHM)が新規参入し鎬を削っている。
このチップがもたらす音質の特徴として、特に高いS/N比と低い歪み率が挙げられる。高いS/N比により、音楽信号がクリアに再生され、細かなニュアンスや音場の広がりをより鮮やかに表現できる。 背景ノイズが少なく、音が空間の中に浮かび上がっているような、自然で静寂感のあるサウンドを実現する。また、ダイナミックレンジが広く、音楽の迫力や繊細さをより深く味わうことができる。
次に低い歪み率により、より原音忠実に近づいたな再生が期待できる。当然ながら、楽器の音色やボーカルのニュアンスをより正確に再現できる。クリアで自然に聴こえ、特に高域の伸びやかさや、低域の締まり感が向上している。こうした音質傾向により、長時間聴いていても聴き疲れが少なく、快適なリスニング体験が期待できる。
ES9038PRO、ES9039PROとの違い
ESSの据え置き型ハイエンドDACチップは、末尾にPROが付くタイプだ。最新版は、ES9039PROとなる。これは、1チップ当たり8chを要するのに対して、末尾がQ2MのDACは、1チップ当たり2chでモバイル機器にも対応しやすく低消費電力となっている。コンセプトとして、基本性能を同じくして、価格や消費電力を抑えた廉価版という位置づけだ。
では、前のES9038シリーズとの違いはどのような内容か?メーカーの説明の範囲だが、消費電力の削減により内部のデジタルノイズが減り、音質の向上したとのこと。
次に、MQAレンダリング対応や、サポートするインターフェースの追加として「TDM入力&SPI制御」のサポート。さらに、ハードウェアモードの追加としてMODE, HWピンなど複数のピンで32種類のプリセット設定を選択できるしたという。詳しくは、こちらの「ちかてつ.com」の解説ページを参照してほしい。
ASR (Audio Science Review)でのS.M.S.L D-6sの測定データと評価
躯体的な測定結果は、以下の当該ページを参照してほしい。
歪み成分は -140 dB です! 素晴らしいです。結果として SINAD はノイズに支配され、D-6 はテストしたすべての DAC のトップ 20 チャートにランクインしました。
2-3万円台のエントリークラスDACでありながら、ASRで過去に計測した製品の最上位クラス(エクセレント)にして、全体の(D-6s計測時点での)17位というのは、物凄く良い結果ではないだろうか!
「S.M.S.L D-6s」の先代にあたる「S.M.S.L D-6」について
末尾にsの付かない「S.M.S.L D-6」は、2022.6月発売で、D-6sの1年3か月前の発売である先代製品だ。かなり紛らわしいが、DACチップがESS社のライバルにあたる旭化成のAK4493sのデュアル搭載でチップが違うため、別製品と認識した方がよいだろう。
2022 年第 2 四半期に供給開始のDACチップで、こちらも古いチップではないが、後継機D-6sの発売と共に市場からは消えつつあるようだ。執筆時現在は、Amazonでの取り扱いがまだあるようで、21,800円(税込)とD-6sより安い価格帯となっている。
とはいえ、D-6s同様にASR (Audio Science Review)での評価は最上位クラスの「エクセレント」で順位や数値でD-6sにやや劣るが検討している。
「S.M.S.L D-6s」音質レビュー:ネット上の評価と深堀り分析
ネット上の評価:信頼性が高い順に紹介
Head-Fi
世界最大のオーディオ愛好家コミュニティ。詳細なレビューや比較記事が多く、専門的な意見を得ることができる。D6sに関しても、ヘッドフォン(複数機種使用)での試聴ながらリスニング評価の前に、デバイスで約80時間音楽を再生するなど念を入れた評価を行っている。
評価を要約すると以下となる。「S.M.S.L D-6s」は、忠実度に優れた、非常にニュートラルで透明なDACだ。色付けなく背景は静かで、周波数範囲全体にわたって非常にクリア。やや分析的で無駄のない質感だが、無機質ではない。
ダイナミックレンジは印象的で、インパクトのある低音、リニアな周波数応答、エネルギッシュな高音を備えている。明るく、聴き疲れしない。音場は広々とし、ピンポイントのイメージングが可能だが、奥行きとホログラフィーはそれほど顕著ではない。「S.M.S.L D-6s」は、スタジオのモニターにも最適で、無調整で使用できるだろう。
Bluetoothは安定しているが、音質は優れているが、洗練性と解像度がわずかに欠ける。高音がやや荒くざらついている、人工的な感じがする。ただしこれは、Bluetooth によくある問題だ。
「S.M.S.L DO100」など全世代のES9038Q2Mチップを使用した同社のDACと、大きな音の違いはない。ただし、「S.M.S.L D-6s」は、透明性、ダイナミックコントラスト、クリーンさ、および技術的熟練度がわずかに向上している。小さな機能強化を除けば、サウンドシグネチャはほとんど変更されていない。SMSLの別のES9038Q2M DACをすでに所有している場合は、「S.M.S.L D-6s」にアップグレードする必要はないが、新規導入では、最新チップが組み込まれ、価値が高い高評価となる。
Headfonics
2011年にフィリピン発祥で設立され、現在ではスイス、ドイツ、オーストラリア、東南アジア、米国など、世界各地の経験豊富なチームメンバーが参加して活発なオーディオレビューを行っている。
こちらでの評価を要約すると以下となる。製品としての総合評価は、10点満点で8.4の高評価だ。すべてのテストは、Topping L30 IIアンプ、Sennheiser HD 580 Precision、Modhouse Argon MK3 ヘッドフォン、およびMoondrop Blessing 3 IEM を使用して実施した。
「S.M.S.L D-6s」 は、刺激的でダイナミックであり、ニュートラルなサウンドの DACだ。優れたダイナミック レンジで、複雑なアレンジメントを曖昧さなく表現する。このDACは、平均以上のイメージング性能に加え、ムラなく優れた性能を備えている。ニュートラルで刺激的な音色は、ニュートラルなサウンドのアンプとよく合う。
「S.M.S.L D-6s」 は、全体的な音色バランスを損なわない、クリーンでありつつ魅力的な音色。音に暖かさや明るさを加えることなく、元の音色を維持しながら、優れたダイナミクスで興奮を加える。
低音域バスドラムには重みが加えられず、ベースリフは低中音域に漏れ出さない。それにもかかわらず、低音域への優れた拡張で、深みのある男性ボーカルが空虚に感じない。低音の打音はインパクトが強く、質感も良好。他の性能の劣る DAC と比較すると、質感の違いが顕著。
中音域は、ニュートラルだが刺激的。弦楽器は明瞭で質感があり、ボーカルは、ニュアンスを感じる。ここでも、純粋な質感の再生がすぐに目立った。
女性ボーカル高音パートは、僅か煌めきを伴い、細部まで表現される。高音域は非常に詳細。異なるシンバルの打音は容易に区別でき、表現に歯擦音はない。他の手頃な価格の DACのような、圧縮された「ザクザクした」スネアと比較すると、スネアドラムは豊かでニュアンスに富む。
一方で、高域は全体の中で唯一私を感動させなかった。パフォーマンスは良好だが、これまで試した DACより明らかに優れているというほどではなかった。
Amazonのレビューは?
「S.M.S.L D-6s」 を購入したユーザーによるレビューが多数投稿されている。執筆時の星評価は、4.5でレビュー数は50。
ただし、専門的な知識を持たないレビューも含まれ、内容を鵜呑みにしないよう注意が必要だが、一部(高評価レビュー)を抜粋要約して紹介する。
熊之庄sp
非常にバランスが取れている。音を出した瞬間、おお!いいぞって思わず出てしまう。これまでエントリークラスからミドルクラスまでのDACをを使って来たが、歴代の中でトップクラス。
全帯域で歪の無いスッキリとした感じで、心地良い。曇った所が全帯域で感じられない。人によっては大人しい音に感じるかもしれないが、高音が伸びていて、中低がパンチの有る音作りに感じた。コスパを考えると、価格の3倍は有る。是非一聴あれ!
はる
低コストで音楽を楽しみたいとあれこれしているうち、中華DACもかれこれ4台目。これまでのDACと一番違うと感じているのは、聴いた時の心地よさ。特に、ピアノやボーカルは、ゆったりと落ち着いた気持ちで聴くことができる。激しめの曲も破綻なく、自然な感じがとても気に入っている。おかげで、もっといいスピーカーが欲しくなった。コストパフォーマンス、最高。
Amazonカス夕マー
通常配送なのに中国から10日以内に届いた。ES9039Q2Mで、9039PROではなく要注意。
まず今までのESSチップと傾向が違う。ESSと言えば押出の強い中高域のフィルター。しかし「S.M.S.L D-6s」はしっかりと低域を感じる。驚くべきことに、余計な響きが取り除かれている印象。確実に音質が安定している。
一方高音質とはなにかという話だが、音楽室の吸音で響きを排した場所では、かなり違和感(静かすぎると逆に自分の耳自体がノイズを感じ始める勘違い)。余計な響きは心地よさにつながる?とこのDACで思う。しかし、フィルターは7つ選択でき、響きのある音も出せる。自分が多少歪みがある響きのある音が好きなのか、歪みの無い音が好きかを確認するには良い。個人的に、すべての音が出る完全体のDACだと思う。
YouTube
多くのオーディオレビュアーが、「S.M.S.L D-6s」のレビュー動画を公開している。視聴覚的に製品を評価できる反面、レビュー内容はレビュアーの主観が強く反映されるため、複数のレビュー動画を比較検討したい。
Passion for Sound
「S.M.S.L D-6s」は、明らかに非常にコンパクトで手頃な価格。その新しいデザイン、インターフェースなど本当に気に入っている。
では、 音はどうか? 「S.M.S.L D-6s」の音は、最近のDacは、 悪いものを見つけるのは非常に困難。そして、smslやToppingなどのブランド から絶えず新しいモデルが発売され、悩ましいのは、 それらはほぼ同じように聴こえるということだ。
とはいえ「S.M.S.L D-6s」の音はきれいで、 細部までこだわっている。サウンドステージが広く、少し 深みがある。
199ドルのDACに望むものはすべて揃っている。見た目も良く、 パフォーマンスも良く、音も本当に良い。
iiWi Reviews
「S.M.S.L D-6s」の音はどうか?これは本当に良い音だ。聴き始めて気づいたが、フラットな2次元の音ではなく 、生き生きとした魅力的な美しい音を持っていること。
ベースラインのキックと唸りは良い。そして、ベースラインだけではなく全域にわたるサウンド全体が生き生きとしていて、飛び跳ねていて、音楽に引き込まれる。
smsl su1と比較すると、d6sの方が パンチが効いていることに気づく。特に ベースラインでは、ベースラインオーソリティ と d6sでは明らかにうなり音が優れている。ただし、すべての曲でその違いに気づくわけではない。 たとえば、 控えめなボーカルの音楽や アコースティックギターのような音楽を聴くと、 その違いに気づかないが、ベースが効いた音楽や魅力的な音楽を再生すると、すぐに気づく。d6sには SUにはない迫力とインパクトがある。
それに加え、6sのサウンドステージはより広く、少しだけ平坦だが二次元的ではなく、 より引き込まれ 、空間内ではSU1よりも少し明白でよりリアルに感じられる。
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