2017年12月に発売されたアクティブ電源ノイズフィルター
ifi(アイエフアイ)オーディオは、イギリスのオーディオブランド。有限会社トップウイング (英社名 : Top Wing Corporation)が輸入代理店になっている。
iFiオーディオは、「Micro iDSD Black Label」の調査ページでも紹介した通り、イギリスで実績のあるハイエンドオーディオメーカー「AMR(Abbingdon Music Research)」のサブブランドで、ハイエンド機器の開発ノウハウを使い、中低価格帯で高音質な機器を発売しているブランドだ。
具体的な製品の特長
形状としては、コンセントに差し込むだけの製品。写真のように上部にアース端子があり、コンセントのアースプラグが地中アースに接続されていない場合は、このように地中アースと接続して使用する。
コンセントに差し込むスタイルのオーディオ用電源ノイズフィルターは数多く販売されているが、主にパッシブ型でノイズ成分を吸収して熱などに変換する回路である。それに対して、本製品は、ノイズ成分と逆位相の信号を発して、ノイズを中和する働きをする。他の多くのifi製品にも使われている軍事用レーダー技術の応用という事だそうだ。
加えて、コンセントの極性判断機能(アース接続時のみ有効)を備えており、正しい極性になっているかの判定もできる。また、雷などの影響を緩和するサージプロテクト機能も付帯している。
日本の電源環境の場合、コンセントにアースが配線されているのはまれなため、特別にアース接続しない場合は、アース無しと検知され一般的には両方のLEDが赤になる。この場合は、製品のノーマルモードノイズ緩和回路は動作するが、コモンモードノイズ緩和回路は動作しない。
(詳しい説明は、公式のFAQページ参照)
ノーマルモード(ディファレンシャルモード)は、2つの電線を行って帰ってくるノイズで、コモンモードは、2つの電線から同時に機器側にノイズが入るもの。
音質面での影響は
公式サイトによると、一般的なパッシブ型と違い、可聴帯域の低周波から高周波帯まで全体域において約40dBのノイズ低減効果があるという。
音質を直接変化させるというより、SN比を高める効果が期待できそうだ。
国内での評価は
音源出版の「季刊オーディオアクセサリー」168号では、オーディオ評論家の岩井喬氏がレビューを寄せている。
「音像感・分離感の向上」「低音楽器の輪郭が引き締まる」「音場の透明度向上」「定位もフォーカスが良くなる」「S/Nが高まる」といった期待通りの評価を下している(アース接続時)。
レポートでは、2個3個と追加(追加分はアース未接続)してもさらに効果が高まったと報告している。
価格コムでは、9人のユーザーがレビューを投稿している。総合評価は4.2だが、同サイトにしては珍しく辛口の評価が多く4名は音質面で最高評価の5点を付けているが、「音痩せする」「効果をあまり感じない」「改善効果小さい」という評価もあった。
Amazonでは、海外含めて254件の評価が付いており、想像評価は4.1と価格コムを僅かに下回る。本記事執筆時点で、64%が5つ星の最高評価を付けている。価格コム含め、ユーザーレビューサイトでは本製品の使いこなしの難しさがやや減点となり、オーディオアクセサリーとしてはリーズナブルな価格に加点が付いている傾向だ。
珍しいことに、本来ライバルであるはずの有名オーディオアクセサリーメーカーであるAcoustic Reviveが同社の掲示板で詳しい評価レポートを掲載している。「ノイズ感が減少」「押し出し感や力感のある立体的な音へと変化」「鮮度感の高いストレートな傾向」と高評価。同社の別のアクセサリー「QR-8」との併用でさらに良い結果と報告している。
なお、一般ユーザーのブログなどでの評価の中に「測定器で調べたところ、かえってノイズが増えていた」という報告もあった。
海外での評価は
イギリスのオーディオ誌「hifi+」では、本製品を以下のように評価(評価者クリス・マーテンズ氏)している。「トランペットとピアノの合奏では、深みが増しクリアで調和的に豊かに聴こえた」「録音スペースの残響をより明瞭に確認できた」「他のより高価な製品と同等またはそれ以上の音響改善効果を感じた」と激賞している。
イタリアの評価サイト「Soundphile Review」では、主宰者のリカルド・ロベッキ氏によってレビューが報告されている。「音質には変化がないが、バズノイズとヒスノイズの低下を感じる事ができる」「機器によっては大変効果的(逆にノイズ感のない機器では違いが判らない)」といった評価だ。
筆者の評価
本製品を、オーディオシステムの大本のコンセントに一つ(アース接続あり)。酷い可聴ノイズに悩まされているアンプを接続しているタップに一つ(アース接続無し)と合計2個を投入してヒアリングを行った。
筆者のいくつかある自作の真空管パワーアンプでは、不特定な時間帯に「ジージジジ」というノイズが聴こえる。従来からいくつかのフィルターは挿入しているが、このノイズが出るときは同時にLEDが光ってノイズを知らせるPS AudioのNOISE HARVESTERが反応する。
本製品を投入後は、この可聴ノイズは消えないもののかなり弱くなり、NOISE HARVESTERは光らなくなった。本来のノイズ対策としては不完全なものの、聴こえない高周波領域なども含めてトータルの静寂感は増して、SN比の向上は感じられた。音質改善効果はありと判断した。
まとめ
熱対策について
国内のユーザーから、本製品がかなり熱くなり、分解したところ基板の一部とプラスチックに焦げ目を認めた、という報告が出されている。輸入代理店がメーカーに問い合わせたところ「燃焼するほどの熱ではなく、不燃材を使用しているため大丈夫」という趣旨の返答があったようだ。
この一件は、ユーザーの反感も払しょくしきれないようであり、できれば改善製品の発売を期待したい。
なお、高温になるかどうかは、環境に依存するようで、筆者の場合も、一つはまったく高温にはならなかったが、二つ目は(触れる程度の)熱を生じている。
買っても良いと思えるケース
ノイズフィルターであるため、本来ノイズが多い環境では効果が大きいが、逆にそうでなければ聴感上の違いが判別できない可能性も大である。とはいえ、リーズナブルな製品であるため地中アースが備わっているユーザーには試す価値があるのではないだろうか。
製品仕様
ノイズ除去:>40dB(>100x)
サージ保護:最大25,000A@ 8/50uS
動作電圧:85V-265V
サイズ:直径40mm x 長さ100 mm
重量:108g
※製品説明書より引用
コメント 他者への誹謗中傷はお控え下さい